2021 Fiscal Year Research-status Report
水素ガス添加脱窒槽内で発生した脱窒と高濃度PHA蓄積現象の要因解明と制御法の確立
Project/Area Number |
20K19990
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
亀井 樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (80792168)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水素ガス / 脱窒処理 / ポリヒドロキシアルカン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物が作る化合物のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)はバイオプラスチック素材や良質なバイオガス基質である。しかし、生産コストに起因する高価な資源価格が利用促進の障壁となっている。本研究は下水処理と同時にPHA生産を達成する技術を開発してこの導入障壁の突破を目指すもので、そのために水素ガス添加脱窒処理装置内で発生した脱窒反応と高濃度PHA蓄積現象についてそのメカニズムを調べる。そして脱窒とPHA蓄積を同時最大化する制御方法や、下水処理への適用可能性を科学的根拠とともに明らかにし、将来的な技術確立に向けた知見や情報の蓄積をめざす。この目的を達成するために、①脱窒とPHA蓄積の関係性と同時最大化の最適条件の探索、②既存処理への適用可能性の検証、③脱窒とPHA蓄積に関連する微生物の特定とPHA蓄積メカニズムの解明、を課題として定め、小型の排水処理装置を用いた模擬排水処理実験の中で実施する。 2021年度は課題①と③を実施し、脱窒反応に関連する微生物の生育に関する環境条件、特に無機炭素濃度やリン濃度のPHA含有率への影響や、PHA合成遺伝子を有する微生物の特定を試みた。まず、無機炭素濃度が減少すると装置内部汚泥中のPHA含有率は低下しており、炭素濃度もまた脱窒処理装置内部のPHA蓄積を誘引する条件であることがわかった。一方で、リン濃度を変更して処理装置を運転すると、濃度増加に応じてリン除去率の向上が確認できたもののPHA含有率は変化しなかった。これらの検討と並行し、2020年度で取得した汚泥中のPHA合成遺伝子(phaC)の塩基配列を調べたところ、汚泥内で優占菌として存在したThauera属とAzoarcus属由来の遺伝子と類似し、これらの優占菌もまたPHA合成能力を有しその合成に関与していた可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱窒処理装置内部のPHA蓄積条件について、一定の結果とそれに付随する考察を得ることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けてデータを整理し、これまで得た情報をもとに脱窒反応とPHA蓄積を同時最大化する条件のもと、既存処理施設への適用可能性を考慮して処理装置を運転する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた学会(国内・国際)への参加を延期したため旅費が未使用額として生じた。最終年度にて複数の学会への参加費や、微生物の遺伝子解析数を増やしその委託費として充てることとしたい。
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