2020 Fiscal Year Research-status Report
非晶質シリカを用いた焼却飛灰安定化と有害重金属の鉱物学的不溶化
Project/Area Number |
20K19992
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
北村 洋樹 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 特別研究員 (70867035)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 焼却飛灰 / 非晶質シリカ / 有害金属 / ポゾラン反応 / 二次鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
特別管理廃棄物である一般廃棄物焼却飛灰へ非晶質シリカとして珪藻土を添加し、異なる温度で養生することで、有害重金属の不溶化に対する影響を検討した。養生後の焼却飛灰は、廃棄物に含有する有害物質の溶出性を評価し、最終処分場への埋立判定可否を判定するための溶出試験に供した。その結果、珪藻土の添加量が同じ場合、養生温度が高く、養生期間が長いほど鉛の溶出量が減少することを確認した。今回の試験では、珪藻土を10 wt%添加し、70 °Cで14日間の養生を行うことで鉛の溶出量が99 %減少し、埋立処分判定基準以下(0.3 mg/L)まで溶出を抑制できることを見出した。 養生後の焼却飛灰をX線回折分析に供した結果、焼却飛灰中に含有する水酸化ナトリウムやCaClOHの回折ピークが減少していたことから、ケイ酸カルシウム水和物等を生成するポゾラン反応が生じていたことを確認した。走査型電子顕微鏡による養生後の焼却飛灰の観察においても、珪藻土特有の円筒状構造は観察されず、添加した珪藻土はポゾラン反応によって消費されていることを確認した。 養生後の焼却飛灰を重金属の化学形態を推定するための逐次抽出試験に供した結果、珪藻土を添加して養生することで、鉛の水溶性画分が減少して不溶化していることを確認した。一方で、不溶性である残留物態の鉛も減少していたことから、ポゾラン反応により生成したケイ酸カルシウム水和物により鉛がどのような化学形態で不溶化されているのか、今後の検討を要する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は本研究の課題の1つである鉛の不溶化について、非晶質シリカとして珪藻土の添加が有効であること、養生温度を高く設定することで鉛の溶出量が顕著に減少することを見出しており、有害重金属の鉱物学的不溶化に関する有用な知見を得た。また、これらの結果については査読付き国際学術誌へ投稿済みである。以上の理由から、本研究は概ね計画通りに進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、もみ殻を異なる温度で焼却することによって非晶質シリカ含有量が異なるもみ殻焼却灰を作成する。2020年度と同様の養生試験を行い、重金属の不溶化効果を定量的に評価する。また、作成したもみ殻焼却灰のポゾラン性を測定し、ポゾラン性と重金属の不溶化について相関を求め、未知のポゾラン試料を添加剤として使用する場合の指標を得る。不溶化効果の長期的な安定性についてはカラム試験などを実施することで評価する予定である。
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Causes of Carryover |
湿潤養生後の焼却飛灰は凍結乾燥機を用いて乾燥を行う予定で、凍結乾燥機を購入するための経費を計上していたが、凍結乾燥では生成した二次鉱物が変質してしまう可能性があることから、購入を取りやめた。また、新型コロナウイルス感染拡大により、2020年度に予定していた国内外における学会発表が、延期あるいは中止となってしまったため、旅費として計上していた経費については未使用となっている。次年度使用額については、試料のポゾラン性を測定するために必要な実験器具の購入、国内外におけるオンラインで開催される学会参加費、投稿中の査読付き国際学術誌のオープンアクセス費用などに使用を予定している。
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