2020 Fiscal Year Research-status Report
高活性水蒸気爆砕とLED照射型増殖促進木材腐朽菌処理を用いたバイオエタノール生産
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20K19995
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
鈴木 昭浩 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 特任研究員 (00848509)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バイオマス / 水蒸気爆砕 / LED / 木材腐朽菌 / 針葉樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、未利用木質バイオマスから効率的にバイオエタノールを生産するために、環境保全型の高活性水蒸気爆砕とLED照射型増殖促進木材腐朽菌処理を用いた新規製造システムの開発を行う。従来のバイオエタノール生産研究の課題であった①製造コスト(酵素コスト)の削減、②樹種に依存しない製造システムの開発という課題を①木材腐朽菌の併用によるリグニンの分解・除去に伴う酵素量の削減、②従来の水蒸気爆砕では困難であった針葉樹の前処理にも効果的な高活性水蒸気爆砕の利用により解決する。バイオマスを用いたエネルギー供給と食糧生産は世界規模の課題であり、SDGs達成に大きく貢献でき、化石資源枯渇だけでなく飢餓問題解決の糸口となる。 【令和2年度】高活性水蒸気爆砕の最適前処理条件の決定 スギとタケの高活性水蒸気爆砕(水蒸気圧力2 - 5 MPa (水蒸気温度215 - 260℃) 、蒸煮時間1 - 10 min)を行った後、処理物の粒径分布、pH、抽出成分量、脱リグニン度等の物理的・化学的性状変化に及ぼす爆砕条件の影響を究明することにより、試料の樹種に応じた最適な爆砕条件を決定する。ここでは、従来の水蒸気爆砕法よりも高温高圧での条件で処理が可能であり、これまでは処理が困難であったスギなど針葉樹の前処理としての有用性を評価した。これにより、樹種に依存しない製造システムの開発のための処理条件が決定できる。 LED照射型増殖促進木材腐朽菌の最適培養処理条件の決定と処理物の加水分解 水蒸気爆砕後の処理物を原料培地としてLED 照射型増殖促進木材腐朽菌の培養を行うため、種々の木材腐朽菌(白色腐朽菌、褐色腐朽菌やアルコール生産菌)を用いてLED光照射条件の検討(波長、照度、照射時間、2つ波長の組み合わせ)を行うための培養装置の設計、作製を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
針葉樹である、スギの最適爆砕条件の決定と草本類であるタケの最適爆砕条件の決定が行えた。この2種類の樹種の最適爆砕条件に開きがあり、単体での水蒸気爆砕前処理が最適である結果が得られた。しかしながら、本研究で使用している水蒸気爆砕装置が樹種の種類に関係なくバイオマス分解処理として有用であることが示された。 LED照射培養装置の設計、作製において使用するLEDの選定及び培養装置に組み込むための条件(培養容器の光透過性など)のデータ取得、取得したデータから最適容器の選定など概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
【令和3年度】LED照射型増殖促進木材腐朽菌の最適培養処理条件の決定と処理物の加水分解 水蒸気爆砕後の処理物を原料培地としてLED 照射型増殖促進木材腐朽菌の培養を行う。種々の木材腐朽菌(白色腐朽菌Phanerochaete sordida、Hericum erinaceum、褐色腐朽菌Fomitopsis palustris、Sparassis crispaやアルコール生産菌Trametes hirsuta、T. suaveolens)を用いてLED光照射条件の検討(波長、照度、照射時 間、2つ波長の組み合わせ)を行い、処理物の酵素糖化率や木材腐朽菌の培養時間などから最適な木材腐朽菌および培養処理条件を決定する。 次に、高活性水蒸気爆砕LED照射型増殖促進木材腐朽菌処理によって得られた処理物の加水分解を行い、必要酵素量を削減できることを立証する。 【令和3~4年度】バイオエタノール生産の効率化と本研究システムの総合的評価 前年度までに決定した最適爆砕処理・培養処理条件で得られた糖化液を用いて効率的にエタノールを生産するためのアルコール発酵方法について検討する。なお、発酵には高濃度エタノール生産が可能な耐熱性酵母Saccharomyces cerevisiae BA11(バイオアカデミア株より供与済)を用いる。最後に本研究システムの有用性を物質収支やエネルギー収支の面から総合的に評価する(この課題については現在および以前所属していた先生方に指導をいただく予定である)。
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Causes of Carryover |
3月納品となり、4月支払い分のため、次年度使用額が生じた。
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