2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of separation technique of 4f and 5f elements with optical switching of oxidation states
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20K19999
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
松田 晶平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 博士研究員 (00824591)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | fブロック元素 / f軌道電子 / 共鳴多光子電荷移動 / 元素分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにEu(III)の還元について励起光フルエンス依存性を検討し効率に関する知見を得た。また、アメリシウム(Am)についてIII価からV価への酸化を観測し、本手法による選択的な価数制御をアクチノイドで初めて実現した。 令和3年度はとりわけAm(III)の酸化についてメカニズムの観点から詳しく調べた。硝酸水溶液でAm(III)のf-f遷移に相当する503nmのナノ秒レーザーを試料に集光照射することによりAm(III)からAm(V)への酸化が誘起された。この現象の励起光波長依存性とフルエンス依存性の測定結果から共鳴多光子過程であることが確認できた。硝酸濃度依存性の測定結果からAm(III)と硝酸イオンの錯体が反応原系であると考えた。水溶液中での錯形成の挙動をX線吸収微細構造解析により検討し、密度汎関数計算により錯体構造の最適化を行ったところX線吸収微細構造解析結果を支持した。これらから観測された光酸化にはAm(III)と硝酸イオンの1:1錯体が決定的に寄与しており、多光子励起によって電荷移動が誘起されることが示唆された。また、量子化学計算によりこのポテンシャルエネルギー曲面を探索したところ反応経路の候補を見つけるに至った。 本手法による元素分離を演示するためにランタノイドおよびアクチノイド混合系、具体的にはIII価プラセオジム(Pr)とAmの硝酸溶液におけるAmだけの価数制御とその分離にも取り組んだ。吸収スペクトルから予想できる通り元素混合系でもAm(III)のみの価数制御に成功した。503nm照射により上述したAm(III)からAm(V)への酸化が確認された。有機溶媒にドデカン、抽出剤にTODGAを用いて残存III価イオンをほぼ100%有機相へ抽出した。これにより水相にAm(V)だけを孤立させ、本手法により価数制御した元素の分離を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初の目的元素の1つであるAm(III)と硝酸イオン錯体の共鳴多光子電荷移動を発見し、そのメカニズムを明らかにした上でPr/Am系におけるAmの元素分離を実証した。この成果については総合学術誌Science Advancesへ投稿し受理された。これらを踏まえ、「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Am(III)と硝酸イオン錯体の共鳴多光子電荷移動に関して効率化を図る。これまでに得られたEu(III)の多光子還元の結果と比べ、Amの場合は効率が数桁小さい可能性がある。メカニズムが異なるため単純に比較できないものの、各励起ステップの量子収率の系統的な調査とより高い効率の実現に向けて二色二光子励起によるAm(III)の共鳴多光子電荷移動に取り組みたい。また、準安定と考えられているIII価以外の電子状態については蛍光など基礎的知見すら乏しい。励起後の光学過程の理解にはこれらの情報も欠かせないため、まずはAm(V)の蛍光に関する知見を得たい。加えて現状では、照射レーザーの8割以上の光子が溶液を透過し反応に使用されていない。反応容器と光学系の工夫によりロスを最小化し、入射エネルギーに対する効率の向上も図る。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、波及効果の大きいAm元素に焦点を当てたことによる消耗品の購入計画の見直しや学会の開催方式がオンラインに変更になったこと等により、当初計画よりも支出額が少額となったことから次年度使用額が生じることとなった。 次年度使用額は、令和4年度分研究費と合わせて、効率化を目指す上で必要となる励起レーザー照射に用いる光学素子や反応容器の加工及び試薬の購入等に係る経費として使用する。
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Research Products
(2 results)