2021 Fiscal Year Research-status Report
生物多様性にやさしい騒音緩和策の提案:野外操作実験からの検証
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20K20001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
先崎 理之 北海道大学, 地球環境科学研究院, 助教 (10845514)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 騒音汚染 / 交通騒音 / 防音壁 / 低騒音舗装 / 鳥類群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、申請者らの研究から、交通騒音が生物多様性を左右する種数・個体数に大きく影響することが分かってきた。このことから、生物多様性への騒音の影響を抑止する緩和策の開発が求められている。しかし、生物多様性への騒音緩和策の効果を検証した研究は未だにない。そこで本研究では、野外騒音再生システムを用いて、実現可能または高い効果が期待される緩和策下での騒音低減・周波数変化の様子を再現する。そして、各緩和策の実施が、非実施時の鳥類の種数・個体数をどの程度回復させるのか、回復の程度は群集・各機能群間で異なるのかを明らかにする。これにより、生物多様性保全に最も効果的な緩和策を提案する。
令和3年度は、新型コロナウィルス感染症蔓延防止に注意を払いながら、4~8月は騒音再生システムの最終調整と野外調査地の最終選定を行った。野外調査地には、北海道苫小牧市の森林地帯のうち、互いに十分に離れ、渡り鳥の個体数が多い10か所を選んだ。9~11月に、各調査地で1週間おきに複数の種類の交通騒音を再生し、早朝に鳥類の種数と個体数を毎週数えた。今季の調査では、約50種類が記録された。予備解析の結果、鳥類の種数・個体数は騒音低減によって回復する傾向があることが分かった。機能群ごとの騒音の影響の違いや周波数変化の影響は今後検証する。予算は野外調査で用いる予定だった一部の観測機材の取り寄せが間に合わなかった都合で一部繰り越した。この観測機材を用いた調査は最終年度に実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症蔓延によって研究遂行にいくらかの制約があり、一部予算を次年度に繰り越したものの、騒音再生システムの最終調整、調査地選定を行うことが出来、コロナウィルス感染対策に気を付けながらも、秋の野外調査を予定通りに実施することが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度となる本年度も新型コロナウィルス感染症の蔓延状況を慎重に判断しながら研究を遂行する。まず、上半期には前年度に引き続き調査地の出張を行い、前年度に利用した調査地の継続利用の可否を判断する。また、予備調査地も選定する。9~11月には前年度に引き続き同様の調査を実施する。野外調査が終わり次第、得られたデータをまとめ、統計解析に取り掛かる。その後、論文執筆を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症蔓延およびウクライナ戦争のために日本の代理店を介して米国企業に発注した本課題に利用する予定だった野外調査用の観測機材が、発注後7か月を経ても納品されなかった(現時点で納品されていない)。繰越額の約80%がこの機材に支払い予定だった予算であるため、納品され次第予算を使用する予定である。残りの約20%は、昨年度に引き続き新型コロナウィルス感染症蔓延のために複数の国内外学会がオンライン開催となったことで使用しなかった出張滞在費である。本年度も国内外の学会の開催形態は見通せないが、現地開催の場合はその出張滞在費に充てる。オンライン開催となった場合は、より充実したデータを取得するための野外調査の出張滞在費に充てる。
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Research Products
(2 results)