2022 Fiscal Year Annual Research Report
生物多様性にやさしい騒音緩和策の提案:野外操作実験からの検証
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20K20001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
先崎 理之 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (10845514)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 騒音汚染 / 交通騒音 / 防音壁 / 低騒音舗装 / 鳥類群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、申請者らの研究から、交通騒音が生物多様性を左右する種数・個体数に大きく影響することが分かってきた。このことから、生物多様性への騒音の影響を抑止する緩和策の開発が求められている。しかし、生物多様性への騒音緩和策の効果を検証した研究は未だにない。本研究では、野外騒音再生システムを用いて、実現可能または高い効果が期待される緩和策下での騒音低減・周波数変化の様子を再現する。そして、各緩和策の実施が、非実施時の鳥類の種数・個体数をどの程度回復させるのか、回復の程度は群集・各機能群間で異なるのかを明らかにすることを目的とする。
令和4年度は、新型コロナウィルス感染症蔓延防止に注意を払いながら、野外調査を実施した。北海道苫小牧市の森林地帯のうち、互いに十分に離れ、渡り鳥の個体数が多い10か所に騒音再生システムを設置した。これらは過年度と同じとした。9~11月に、各調査地で1週間おきに複数の種類の交通騒音を再生し、早朝に鳥類の種数と個体数を毎週数えた。過年度までのデータと合わせて統計解析を行ったところ、鳥類の種数・個体数は騒音の大きさと負の関係にあり、緩和策の実施によりわずかに回復する傾向を示すことが分かった。複数の機能群(樹冠選好種、地上選好種、留鳥、渡り鳥)や個体数の多かったいくつかの種に絞った解析でも同様の傾向が検出された。これらの結果は、今回検証した緩和策の実施により、鳥類群集への騒音の負の影響は緩和されうるが、その効果は大きくない可能性があることを示す。また、低騒音舗装や防音壁による騒音低減程度は交通量や車の走行速度にも依存するため、今後は緩和効果の高い条件を明らかにする必要があることを示す。
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Research Products
(3 results)