2021 Fiscal Year Research-status Report
森林の落葉多様性が分解速度を促進するプロセスの解明
Project/Area Number |
20K20003
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
執行 宣彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 任期付研究員 (70866110)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 土壌微生物 / 生物多様性ー生態系機  / 機能形質 / プライミング効果 / ニッチ相補性 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木の生産する多様な落葉が森林土壌の生態系機能を向上させることが古くから指摘されている。しかし、落葉の多様性が土壌生態系に与える影響のメカニズムは、十分に明らかにされていない。この原因は、主に植物の生産する膨大な種類の代謝産物が、落葉分解を通じて土壌微生物群集とどのように関係しているのかが解明されていないためである。本研究では、環境傾度に沿った落葉組成と微生物群集の変化を野外調査により把握し、分解速度を促進させると考えられるプロセスを落葉を混合させる室内実験により評価することを目標とした。具体的には、様々な形質の落葉の混合により分解速度を促進させるプロセスと考えられるプライミング効果仮説とニッチ相補性仮説を検証することを室内実験の目標とした。 令和3年度は、予定通りマイクロコズム試験を開始した。まず、落葉多様性が分解速度に及ぼす影響は分解初期~後期で異なる可能性があったため、非破壊的な方法を採用して、二酸化炭素生成速度を測定することで、炭素無機化速度を測定した。そして、落葉多様性ごとの分解パターン特定に最適な炭素無機化速度の測定頻度、リター/土壌の比、培養期間を明らかにする予備試験を行った。なお、令和2年度に秩父演習林で採取した落葉は、予備試験を行うのに十分な量が得られなかったため、茨城県城里町北山国有林内の落葉(スギ・コナラ・イヌブナ・イタヤカエデ)と土壌を使用した。この予備試験の結果、炭素無機化速度は分解初期(1~7日目)では変化が大きく、樹種ごとにそのパターンが大きく異なることがわかった。リター/土壌の比は、分解パターン自体にはあまり影響を及ぼしていなかった。また、炭素無機化速度は99日間の培養でどの種もほぼ一定の速度になり、この程度の期間が適切であることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、(1)室内でのマイクロコズム試験における適切な培養条件を検討すること、(2)落葉多様性の少ないコメツガの優占する高標高(約1800 m)の地点の鉱質土壌(0-10 cm)を採取し、落葉多様性を変化させるマイクロコズムの本試験を準備することを計画していた。これらの2点については、計画通り進めることができ、研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、落葉多様性を変化させるマイクロコズム試験を行う。コメツガ1種にイヌブナ・ウダイカンバ・ウリハダカエデを組み合わせた条件(1種~4種)での落葉混合実験を予備試験と同様の条件で行う。様々な形質の落葉の混合によりコメツガの分解速度が促進するかどうか検証する。また、実験後のコメツガの微生物群集を分析し、プライミング効果仮説とニッチ相補性仮説の相対的重要性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
マイクロコズム予備試験において、微生物群集の委託分析を行わなかったため。次年度は微生物群集のアンプリコンシーケンス解析の委託を追加で行う必要があり、「その他」の経費として使用する。
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Research Products
(5 results)