2021 Fiscal Year Research-status Report
生態系保全策・気候変動適応策の地域間矛盾解消に資する乾燥地フードチェーンの解明
Project/Area Number |
20K20004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原 裕太 東京大学, 教養学部, 特任助教 (50866910)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 食料供給 / 地域計画 / 地域間相互作用 / 米・小麦食 / 雑穀食 / レジリエンス / 農業生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトの目的を見据え、本年度には主に以下の研究を進めた。 まず、中国北部内陸地域の主要な食料(とくに米)供給基地である寧夏回族自治区の状況に焦点を当て、当該地域で開発される稲品種の特徴とその変化について、中国国内データベースを用いた分析を行った(学術誌に原著論文を投稿中)。また、生態系との社会の共生や気候変動適応、災害レジリエンスを念頭に、河北省張家口市における雑穀生産・消費に関する調査結果(2021年3月に日本地理学会で発表)を、空間情報を用いてさらに分析を進めたうえで、学術誌に原著論文を投稿した。 学会発表では、農村計画学会春期大会(2021年4月)において「SDGsの観点からみた地域計画研究の動向と課題分析: 中国・黄土高原を事例として」と題して発表した。国際英文誌・中国国内誌・日本国内誌を対象に、黄土高原を対象として発表されてきた既往研究の動向を、テキストマイニング手法と空間分析を用いて網羅的に明らかにし、さらにその傾向をSDGsを指標に評価した。また、DTXIV International Conference on Arid Land Studies(2021年9月)には、黄土高原にかつて多く存在した、自然環境と共生した伝統住居「ヤオトン」の分布復元を、冷戦期の米軍偵察衛星画像を用いて行った成果を発表した。本成果は査読を経て、2022年7月のJournal of Arid Land Studies Vol.30(1)への採録が決定した。 そのほか、乾燥地および内陸中国における持続可能なくらしのあり方を検討するべく、高村弘毅氏が2021年に出版した書籍『写真で見るタクラマカン沙漠縁辺の自然と人』(古今書院)の書評を『地理』Vol.67(2)に発表した(招待あり)。 加えて、現地で活動するNGOとの意見交換も定期的に実施し、研究の展開に還元した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響が国内外において継続している影響で、現地での情報収集、調査活動の一部が引き続き制限される状況が続いている。一方で、既存のデータベースの利用やカウンターパートとの調整、ならびに新たな研究手法の開発等によって、重要かつ興味深い成果が導かれており、今後もさらなる進展が十分に期待できる状況にあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、新型コロナウイルス感染症の流行および関係国の政策動向をレビューしつつ、現地のカウンターパートの協力による調査の依頼・実施、先行研究のレビューの蓄積による現状の把握、統計情報や衛星画像等を通じた解析等を並行して進める。調査が可能になった場合には、研究計画に従って、現地と調整の上で食料供給・消費や農業生産に係るフィールドでの調査を実施する。以上の成果については、今年度も国内外の学会・学術雑誌への発表、市民向けの講演・発表等を通じて、広く成果を還元することを考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響継続により、予定していた国内外での情報収集、調査活動の一部が実施できず、アプローチや進度の一部を調整、変更したためである。とくに本年度は、デルタ株、オミクロン株の出現により、国内外での感染拡大が断続的に続き、対象国の一つである中国でも西安市等でロックダウンが実施された。引き続き、関係国・地域および所属組織の方針・対策に従いつつ、次年度における実施を検討する。
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Research Products
(3 results)