2021 Fiscal Year Research-status Report
石炭火力発電所に由来する大気汚染物質の健康被害評価と削減政策の提案
Project/Area Number |
20K20025
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
永島 史弥 近畿大学, 経済学部, 講師 (50845956)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 石炭火力発電 / 大気汚染 / 健康影響評価 / アジア / データ包絡分析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、データ包絡分析法(DEA)を用いて中国の石炭火力発電所の効率性スコアを推計し、非効率なスコアを有する石炭火力発電所に対する排出抑制技術の導入および抑制技術水準の高い新規発電所への代替等で改善される大気汚染物質排出量と健康被害の推計とその不確実性分析を行った。その結果、発電所の環境効率改善は、大気汚染物質による健康被害を軽減する上で重要な役割を果たすこと、早期死亡者数の削減ポテンシャルは空間的にばらつきがあること、省レベルでは大気汚染物質の排出削減ポテンシャルは早期死亡者数の削減ポテンシャルと相関していないことが明らかになった。個別の石炭火力発電所ごとの環境効率性の改善がどれだけ健康被害削減へ寄与したのかを明らかにした点で本研究の学術的意義は大きいと考えている。なお本研究成果は査読付き英文誌Energy Economics誌において現在査読審査中である。 また、本年度は石炭火力発電の環境効率性の空間的な集積に焦点を当てた分析も行った。具体的にはDEAと空間自己相関分析を組み合わせた研究フレームワークを提案した。分析の結果、分析対象期間中に発電所全体の環境効率は上昇し、沿岸部と内陸部の環境効率の差は縮小したこと、中国の石炭火力発電所の環境効率には有意な空間自己相関があり、この空間集積は年々増加していること、高効率の発電所は沿岸部に、低効率の発電所は内陸部に空間集積が発生していることが明らかになった。本研究成果は査読付き英文誌Clean Technologies and Environmental Policy誌に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの制約などから若干の方針転換もあったが、論文執筆から投稿まで予定通りに進めることができた。また年度内に論文1本を査読付き英文誌に受理されたことなどから、おおむね順調な研究経過であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度のため、これまでの分析を踏まえ研究のとりまとめを行う。投稿中の論文については査読審査の結果を受け、必要に応じてさらなる分析・改訂を行う予定である。将来のエネルギー政策の動向を注視しつつ、シナリオ分析やデータベースのアップデートも行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で学会(特に国際学会)などの出張が困難となり、想定を上回る予算が次年度の使用額として繰り越された。
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Research Products
(5 results)