2023 Fiscal Year Research-status Report
Expansion and Contraction of Stateless Space: Family, Gender and Social Changes in Mountainous Societies at the China-Myanmar Border
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20K20036
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
堀江 未央 岐阜大学, 地域科学部, 助教 (80773522)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 移動 / ジェンダー / 非国家空間 / 中緬国境 / ラフ族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゾミア論を中心とする非国家空間に関する議論にジェンダーの視点を導入し、国家との接触面で起こる人の移動に家族やジェンダーが果たす役割を解明することを目的としている。本年度は、2023年6月に韓国で開催された国際学会AAS(Association for Asian Studies)にて、20世紀初頭の国境を越えた宣教師の活動によって、ラフ文字の正書法の普及がどのように変遷したかを研究報告した。これについては英語の論集として投稿論文を執筆予定である。 また、2023年9月にはタイ国チェンマイ県ファーン郡のラフ族村落を訪れ、主にミャンマーとの国境を越えた移動に関する聞き取り調査を進めている。タイでの初めての調査であり、デリケートな話題であることもあり情報収集は途上であるが、調査地を選定し、今後さらに調査を進める予定である。 さらに、チェンマイ大学およびオーストリア科学アカデミーに所属する雲南タイ族研究者のRoger Casas氏と、名古屋大学の加藤久美子教授らとともに行っている共同研究「メコン川上流地域における宗教・経済・ジェンダー:人類学的・歴史学的視点から」を本研究とも連動させ、中国雲南省およびタイでの共同調査の可能性に向けて議論を進めている。雲南省は、外国人による調査の難しさが依然として続いているため、調査の実施には慎重を要するが、そのぶんタイでの調査を充実させていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的蔓延に起因する行動規制は収まり、今年度は雲南省での調査を実施予定であったが、外国人の調査に対する規制が厳しくなっており、反スパイ法の制定など様々な要素を勘案した結果、今年度は入境を見送ることになった。その代わりにタイでの調査を実現することができたが、初めての調査ということもあり短期サーベイにとどまっている。今後さらに調査を進める必要がある。 教育活動の面では通常業務が戻ってきたため、前年度よりは落ち着いて研究活動を進めることができ、文献の読解も進めている。しかし、本年度より夫の単身赴任が決定し、子育てに関わる労力が増えているほか、遠方に住む高齢の母の病気の看病もあり、家庭の事情で研究の進度はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、中国雲南省での調査の再開の可能性を待ちつつ、タイのチェンマイ県ファーン郡のラフ族村落で積極的にフィールドワークを進める。また、海外調査に行かない時期には、東南アジア諸地域のジェンダーや通婚に関する文献の読解を進め、国家との接触面で起こる人の移動に家族やジェンダーが果たす役割を解明し、研究を進めていく。さらに、初年度に実施予定であった明清期の文献についても改めて読み直し、成果執筆の作業を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究の進捗が遅れており、なかでも海外渡航にかける予定であった費用が一部しか使用できず、次年度使用額が生じている。
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