2020 Fiscal Year Research-status Report
カレン難民の故地帰還とコミュニティの再形成を追う―映画制作と上映を通した考察
Project/Area Number |
20K20037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
直井 里予 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携講師 (50757614)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 難民 / 帰還 / カレン人 / タイ / ドキュメンタリー / ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
ビルマ内戦(1948-2012年)の難を逃れてタイの難民キャンプで生活していたカレン系ビルマ人(カレン難民)の故地への帰還事業が始まっている。本研究では、キャンプで数世代を過ごした後に故地ビルマ南部カレン州に帰還し、新たな社会生活を営み始めた難民たちの姿を追い、「帰還」をめぐる人々の社会関係(コミュニティ)の詳細を明らかにする。そして、応募者自らの撮影によるドキュメンタリー映画を用いて記録・分析する。これにより、応募者がこれまで「難民キャンプ」と「第三国定住地」で行ってきたカレン難民研究の先端に本研究を位置づけ、移動と定住をめぐる社会関係分析を深化させる。また、映像を媒体とした研究の手法について、「上映」というイベントを通して当事者と研究者の相互交渉を図る新たな地域研究の手法を提示する。したがって本研究は、「難民の帰還をめぐる社会関係の議論」と「映像表象の研究手法の議論」の二重構造をとる。 難民の生きざまや人間関係の変化を映像として記録するドキュメンタリー映画制作により、従来型の価値観をもつ(主に欧米の)映像作家が「差別され貧困にあえぐ難民」のようなイメージ事象を描くことに傾斜しがちであったのに対し、難民のコミュニティに入り込み、彼らの日常生活を内側から写し撮り、彼らを取り巻く日常社会の現実を表象する。 映像を使用し、新たなフェーズである「帰還」をめぐる難民たちのアイデンティティの変容や生成を、これまでと同様の「内側」の視点から、同時代の社会経済状況と関連させつつその人間・社会関係を描出する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、難民の帰還に関する文献調査を通して、学術的貢献としてどのような貢献ができるか検討した後、ビルマへ渡航し、難民の帰還に関するフィールド調査および撮影(ドキュメンタリー映像制作)を行う予定であった。 文献調査は予定通りに進んだが、新型コロナ感染流行のため、フィールド調査および撮影が延期となり、映像制作が遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、文献調査および映像編集を進めていく。その上で、新型コロナ流行が落ち着き次第、タイへ渡航し、ビルマ国内政治不安により、ビルマから国境を越え、難民キャンプに避難してきたカレン人の調査を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染流行のため、フィールド調査が行えず、旅費が使用できなかったため。
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Research Products
(1 results)