2023 Fiscal Year Annual Research Report
国家ブランディング概念を用いたシンガポールの生き残り戦略の研究
Project/Area Number |
20K20042
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Research Institution | Hokkai School of Commerce |
Principal Investigator |
坂口 可奈 北海商科大学, 商学部, 講師 (50756070)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国家ブランディング / シンガポール / 観光政策 / 国家建設 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、シンガポールの国家ブランディング戦略について、グローバルかつクリエイティブ・シティとしての姿のアピールに引き続き焦点をおき、そのユニークさの模索を追った。ユニークさの模索に関して、他国の資源を自国に取り入れて利用する意味として使われてきたShakkei(借景)に注目した。そして、このShakkei(借景)は、経済発展戦略だけでなく観光資源開発においてもみられること、そして国家ブランディングにおいてシンガポールはグローバル・シティとしての姿だけでなく、近年ではその機能をも見せていたことを学会報告の形で発表した。 本研究期間全体を通して、対外面では観光に、対内面では教育に焦点を当てて、シンガポールの国家ブランディングを分析してきた。その結果、以下の事柄が明らかになった。一つ目は、シンガポールが、多民族が共生し世界から人材や資本が集まる東南アジアのハブとしての機能を持つグローバル・シティであり、21世紀以降はそれに加えてクリエイティブ・エコノミーを重視するクリエイティブ・シティとしての国家ブランドを打ち立てようとしてきた点である。二つ目は、シンガポールは、自国の姿を対外的に宣伝するだけでなく、歴史教科書における自国像の記述を変化させることで、政府が望む自国像を国民に教え込もうとしていた点である。これらは、シンガポールの生き残り戦略は、経済発展を追及するだけでなく、自国のイメージ形成をも重要視していたことを示している。 本研究課題はシンガポールの国家ブランディングと生き残り戦略において重要な示唆を明らかにすることができた。この成果は学会報告として、そして一部は論文として発表することができた。しかしながら、十分に形にできたとはいえないだろう。本研究課題の知見を形にすべく、今後も研究を続けていきたい。
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