2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20045
|
Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
竹村 和朗 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (60782654)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 憲法 / 議会 / 相続 / 生前贈与 / 契約書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度にあたる2020年度には、法研究の基礎となる「憲法」に関する研究と、家族法の運用へのアプローチとして「相続」に関する研究を進めた。 憲法は近代国家のあらゆる法令の基礎となる法である。現代エジプトの家族法を扱うにあたって、憲法を取り巻く状況を明らかにした(竹村2021「エジプト2012年憲法の読解」『アジア・アフリカ言語文化研究』)。エジプトでは2013年に政治体制が一新され、2014年に新憲法が制定され、その後に選出されたスィースィー大統領を頂点とする政治体制が構築されており、さらに2019年の憲法改正により、大統領の任期が延長されただけでなく、議会が二院制になり、司法に対する大統領の影響力が強められた。憲法条文における家族や母子の保護の強化、男女平等の意識も見られる。今後は家族法の変化を形作るアクターとして、議会に注目する必要がある。 家族法の実態的運用に関連して、家族間の争いになりやすい「相続」の問題に注目して、過去に行ったフィールドワーク資料にもとづき、争いにならなかった事例を取り上げ、どのような法的な工夫がなされたのかを明らかにした(竹村2020a「生前贈与の意味と意義:現代エジプトの事例から考える 」第36回日本中東学会年次大会特別研究集会;竹村2020b「“相続システム”の現状:エジプトの生前贈与の事例から」第3回「中央ユーラシアのムスリムと家族・規範」研究会;竹村2020c「契約書の裏に書かれた土地譲渡:現代エジプトの相続の一事例 」第15回近代中央ユーラシア比較法制度史研究会)。家族法の運用を扱うにあたって、相続が一つの需要な領域になることが示唆され、本研究の今後の焦点として大きな示唆となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は本研究の初年度として、研究対象地のエジプトに行き、資料の所在確認と収集、二年目以降のフィールドワークのための情報収集や予備調査等、現地に行き本研究の基礎となる部分を固める予定であったが、コロナ禍のため渡航できず、これらの調査を行うことができなかったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、本研究の2年目として、家族法や家族裁判所に関する研究を進める。ただし、依拠する文献は日本国内で入手可能なものに限られる。国外からの取り寄せ、オンライン上の閲覧等の方法を模索する。世界的状況を注視しながら、現地調査実施の可能性を探る。
|
Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍のため予定していた旅費(特にエジプトへの海外渡航)を使用することができなかったため。2021年度以降に海外渡航が可能になれば、順次使用していく予定。
|
Research Products
(6 results)