2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20045
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
竹村 和朗 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (60782654)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 家族法 / 身分法 / 法律 / イスラーム法 / エジプト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年次にあたる2021年度には、「家族法の変化」について、おもに2つの側面から研究を進めた。 1つ目は、エジプトにおけるセクシュアル・ハラスメント罪の厳罰化に関する研究である(「セクシュアル・ハラスメントの厳罰化」『高千穂論叢』)。これは、刑法の中にすでにあった刑罰を、2021年8月の法改正でさらに重くしたもので、想定されているのは、路上や電子媒体での女性への性的嫌がらせやつきまといである。法改正議論をたどる中で、この問題が「われらの娘」をどう守り、加害者の「家族」にも責任をとらせるべきかという、社会における家族的価値のあり方や秩序の問題を含むことが明らかになってきた(この点については、八木久美子『神の嘉する結婚』に対する書評論文においても議論した)。 2つ目は、2021年2月にエジプトで生じた身分法改正論議を扱った研究である。身分法とは、エジプト(広くは中東・イスラーム圏)で家族法を指す言葉として用いられており、ここには、イスラーム法にもとづく家族法という含意がある。すでにエジプトでは、いくつかの身分法令が制定されているが、2021年2月には、包括的な身分法改正案が議会に提出され、大きな社会的論議を引き起こした。この背景には、女性の保護と社会進出の支援を謳う現政権の政治的後押しがあったが、それにもかかわらず、法案はさまざまな反対を受け、成立しなかった。この一連の経緯からは、身分法がどの程度イスラーム法にもとづくべきか、そして誰がイスラーム法を解釈し法律に落とし込むのか、という身分法制定の構造的問題があらわになった(政治とイスラーム法の関係は、「エジプト憲法における国家と宗教」『思想』において憲法上の問題として論じた)。この研究は、2022年度内の刊行が見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に続き新型コロナウイルス感染症の世界的流行が続く中で、調査地であるエジプトに行くことはできなかったが、日本で手に入れることができる法律や法案の資料を用いて、本年度に進めるべき家族法の変化について研究を進めることができた。ただし、研究の成果発表は翌年度(2022年度)に持ち越されたため、「おおむね順調に進展している」にした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度移行は、本研究の研究計画の後半にあたる「家族法の運用」を進めていく必要がある。これには、現地(エジプト)での調査が必要不可欠であるが、2022年4月1日時点では海外渡航危険情報のレベルはまだ下げられておらず、2022年度中に現地への渡航およびそこでの調査が可能になるかは現時点では判別できない。こうした状況を踏まえて、今年度は書店を通じてエジプトから資料を取り寄せることで、「家族法の変化」の研究を進展・深化させるとともに、現地調査の可能性を探り続けていく予定である。
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Causes of Carryover |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、海外調査を行うことができなかったため、旅費を使うことができなかった。2022年度に状況が改善した場合には、これを用いる予定である。
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