2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20045
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
竹村 和朗 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (60782654)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 家族法 / 身分法 / 家族裁判所 / イスラーム法 / エジプト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の3年次にあたる2022年度には、「家族法の変化と運用」について、おもに3つの点で研究を進めた。 (1) 2021年2月にエジプトで生じた身分法制定問題を取り上げた(身分法は現地での家族法の呼称)。政府によって準備され、議会に提出された法案の原文を入手し、新聞記事等から制定に向けた動きと背景にある政治的状況、法案に対する批判、そして結果的に成立しなかった理由を探るとともに、法案内容を翻訳した。この作業を2021年度末から進め、2022年5月と8月に『高千穂論叢』に法案解説と全文翻訳が掲載された。 (2) 2022年5月にはエジプトで再び身分法制定の動きが生じた。政府(司法省)に準備委員会が設置され、2021年2月の法案とは異なる、別の法案が作成されはじめた。2022年12月末には中間報告が出され、近いうちに議会に提出される見込みであると報道された(ただし、2023年3月末時点でまだ提出されていない)。この動きの経緯とこれに外部から関わるアズハルの対応について論文にまとめ、2023年5月に刊行される予定である。 (3) 2022年7~8月に、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)に関わる渡航制限が緩和されたため、エジプトに渡航し、「家族法の運用」に関係する司法関係者や家族間の訴え、行政・司法文書の調査を初めて行うことができた。エジプトでは2004年に家族問題に特化した「家族裁判所」が設置されているが、この裁判所において/に関わるどのような調査が可能かを探った。私的な問題を扱う家族裁判所へのアクセスは困難であり、そうした問題を抱える当事者から裁判や調停の進め方を聞く方法をとる方が現実的であることがわかった。そうした聞き取りから得た資料をまとめて2022年12月に英文での論文投稿をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はコロナによる渡航制限が緩和されたことから、これまでできなかったエジプトでの現地調査を含めた形での研究が進められるようになってきたため。現在、エジプトでは身分法に関する法改正論議が継続しているので、そうした動きの情報の収集・分析と合わせて、研究の進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度5月頃から進んだコロナ制限の緩和・撤廃は2023年度も継続すると見込まれることから、今年度もエジプトに渡航し、引き続き「家族法の運用」に関する調査・資料収集を行い、当事者からの聞き取りを進めていく。また、いくつかの法改正が今年度中に成立する見込みであるので、それら新法の成立もフォローしていきたい。
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Causes of Carryover |
2020・21年度にコロナにより旅費が使えなかったため2022年度には繰り越し分が多く生じていたが、2022年度に2度海外調査ができたこと、また2022年夏は円安や資源高によって旅費が高騰したため、繰り越し分の多くを用いた。残る繰り越し分は、2023年度の旅費に充てる予定。
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Research Products
(7 results)