2020 Fiscal Year Research-status Report
現代ネパールにおける職業教育の実践と社会変容に関する研究
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20K20047
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Research Institution | Professional Institute of International Fashion |
Principal Investigator |
安念 真衣子 国際ファッション専門職大学, 国際ファッション学部, 講師 (00848822)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ネパール / 教育 / 職業教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国内外での就労に関連性が高い職業教育に焦点を当て、海外移動や教育市場の拡大が著しい現代ネパール社会において、職業教育がどのように実践されているか、そして労働市場と教育市場の拡大および政治体制と教育制度の再編過程にある同国社会をいかに変容させているかを明らかにすることである。2000年代以降のネパールでは雇用機会や収入向上を求めて海外へ移動する人びとが顕著に増加した。同国内において教育は将来の移動可能性をもたらす機会として期待され、英語ミディアムの初等私立学校や、人材派遣に直結する語学学校などに対する教育熱が高まってきた。労働移動のグローバル化と連関して教育の目的は急速に多様化し、教育ビジネスは活発になり、教育の市場化が進んでいる。 この目的を達成するため、本研究では、現代ネパールにおける職業教育の実践のあり様を、(1)職業教育制度の内容と運用の実態はどのようであるか、(2)職業教育学校とはいかなる場か、(3)職業教育はネパール社会にいかなる社会的モビリティをどうもたらすか、という3つの観点を念頭に置いて研究を進めることとした。 研究初年度である2020年度は(1)に取り組み、制度的観点を中心にした研究活動をおこなうこととした。文献研究では、日本の職業教育および各国の職業教育について文献を読み進め、ネパールおよび南アジアに関する職業教育の特徴の理解を進めている段階である。またアウトプットとしては、直接的に職業教育について報告するものではないが、ネパールの教育をめぐる社会状況の理解としてこれまでの研究をまとめ、研究会および紀要で報告した。加えて、運用の実態を把握するためにフィールドワークを予定していたが、今般の感染症の事情により、現地でのフィールドワークの実施は不可能となったため、同国で職業教育部門を担う公的機関への訪問は次年度以降、可能になった際に実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度である2020年度は、職業教育制度の内容と運用の実態はどのようであるかという問いを念頭に、研究活動をおこなう予定であった。そのため、実際にネパール国内の技術教育・職業教育部門を担う公的機関や教育機関を訪問する予定であったが、今般の感染症の事情により、渡航することが出来ず、当初想定したように情報収集が進捗しなかった。この点に関しては次年度以降への課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、継続的なフィールド調査の実施が主たる課題である。今年度に実施できなかった都市部における公的機関の訪問、および教育機関への訪問を実施する。また渡航が可能になるまでの間に、既に収集してある文献資料の読解、日本国内に在留するネパール出身者へのインタビューを実施し、同国の職業教育制度の内容と運用、そして職業教育の場がどのような社会的位置付けとして想像されているかについて理解を進めたい。
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Causes of Carryover |
ネパールでの現地調査および国内での研究会参加を想定して国内旅費と外国旅費の執行、および現地調査で発生する人件費・謝金の執行を予定していたが、今般の感染症流行のため現地調査を実施することができず、次年度使用額が生じることとなった。 次年度に国内での文献収集・資料収集のための物品費として、さらに在留ネパール人への聞き取り調査として当該費用を使用しつつ、渡航状況が好転し次第現地調査を実施するために使用していく予定である。
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