2023 Fiscal Year Research-status Report
ResRent Linkages between Resources and Monopoly: The Petrochemical Industry in Thailand
Project/Area Number |
20K20058
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 健介 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部・教育部, 特任講師 (00435538)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | レント / レントシーキング / 石油ガス / タイ / アセアン |
Outline of Annual Research Achievements |
経済パフォーマンスに資する形で資源レントを管理するための条件について、2023年度はタイを中心としてインドネシアやマレーシアなども含めてアセアン各国の事例を比較研究した。この際、現在のみのスナップショットではなく、これまでの石油ガス産業の変容について主たる出来事に着目して各国ごとに過程追跡を行った。 その結果、資源公社と官僚機構の権力関係に着目するに至った。この権力関係は各国ごとに多様であり、権力に関する相対的優位は資源公社にあることもあれば、官僚機構にあることもある。また同一国であっても、政治体制の変容その他の外的要因によって、相対的な権力関係が変容することがありうる。 ここで重要なのは、権力の所在ではないように思われる。権力の所在に関わらず、相対的な権力関係が明白で安定していることが、資源レントに対するレントシーキングの社会的コストを抑制しているように思われる。逆に言えば、この権力関係が明白でないときや、アクター間で権力が拮抗しているときは、レントシーキングの社会的コストが増大する傾向にあると考えられる。 1970年代以降の公共選択論で唱えられてきた通り、レントシーキングの社会的コストは経済パフォーマンスを著しく害する。この社会的コストが上記のメカニズムで抑制されるとき、一定程度の経済パフォーマンスを担保した形でレントが管理されうる可能性がある。そしてこの点に着目することで、これまでのASEANの国々の経験について、石油ガス資源からのレントと経済パフォーマンスの関係が一定程度説明できると思われる。 このように仮説的な条件について着想を得つつあるが、最終年度となる2024年度はこの仮説について各国ごとに検討していくこととしたい。具体的にはタイを中心としてアセアン各国において、仮説に基づき半構造化インタビューを繰り返し、上記の仮説的条件について、一定の検証を試みることとしたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
仮説については導出しつつあるが、それを実証するためのフィールドワークについてはやや遅れている。2019年以降の新型コロナウィルスによる海外渡航の困難と、2021年のミャンマーにおける政変がその主な事由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」で触れたように仮説的な条件については導出しつつある。この仮説について、タイを中心としたアセアン各国で半構造化インタビューを繰り返して検証することを通じて、更なる検討課題を見出すことが最終年度の目的である。
|
Causes of Carryover |
フィールドワークの遅延による、旅費支出額の低減のため。今年度必要なフィールドワークを行い執行すると共に、最終成果報告会を開催する予定である。
|