2020 Fiscal Year Research-status Report
Institutional Social Elite Control in Contemporary Monarchies: Comparative Study of Moroccan and Jordanian Cases
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20K20061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 駿 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任研究員 (40828563)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 中東君主制 / 権威主義体制 / ヨルダン / モロッコ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヨルダン、モロッコの比較事例研究を通し、中東の強権的な君主制が統治機構を利用して社会的なエリートを統制するプロセスの実態を明らかにすることを目的とするものである。本研究は特に、社会構成(特にエスニシティ)や制度配置(特に政党組織の配置)に注目し、中東君主制における社会エリート統制を探求している。この課題を達成するため、本研究では、1. ヨルダン・モロッコ両国を対象に、1992~2019年の閣僚人事動向、および閣僚経験者の経歴と、社会的地位に関する情報を収集するとともに、2. 両国の同時期における政党システムの発展の経路を追い、3. その関係性を考察するという構想を持っている。 第1年度にあたる本年度の研究実績は、以下の通りであった。 (1)権威主義体制論、現代中東政治研究のレビューを通して、本研究が立脚する研究仮説である、閣僚ポスト任命を通した社会エリートの統制に関する理論的検討を行った。ヨルダン政治研究者のみならず、中東各国を専門とする複数の研究者を対象に、その成果を報告し、助言を受けた。 (2)これまでの研究を通じて入手したデータをもとに、ヨルダンにおける閣僚ポスト任命を通した社会エリート統制の実効性に関する分析を行なった。ヨルダン政治研究者のみならず、中東各国を専門とする複数の研究者を対象に、その成果を報告し、助言を受けた。 先述の3つの論点に照らし合わせると、これら(1), (2)の成果は、ヨルダンの事例について、1.を中心として、2., 3.の2点に関する成果として位置づけられる。次年度はモロッコの事例研究を中心に、残りの論点を解明すべく、取り組んでいきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先述の通り、本年度は先行研究をもとにした理論的検討と、既に入手済みのデータを用いた事例分析を行うことができた。 しかし、ヨルダンの事例研究に関しては、現地調査によるデータ量の拡充、および研究視座の再検討を行う余地が存在する。モロッコの事例について言えば、手元のデータが限られていることから、現地文書館での調査、現地研究者や政府関係者とのネットワーキング・インタビュー調査によるデータ収集の余地が非常に大きく存在する。 本研究計画の立案当初は、本年度に両国への現地調査を行なって、これらのデータ収集を実施する予定であったが、全世界でのCOVID-19感染拡大の影響により、年度を通して、本邦外務省より両国への渡航中止勧告が発令されるなど、両国への渡航は困難であり、現地調査を行うことができなかった。こういった事情からモロッコの事例研究に関する遅れが非常に大きいため、「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り、COVID-19の全世界的な流行に伴う現地調査の困難により、本研究の進捗には遅れが生じている。次年度以降の現地調査の可能性は不透明な状況が続いているため、現地調査に代替するアプローチを取る必要があると考えている。先述の通り、現地調査の困難による課題は、1. データ収集の困難 2. 現地研究者とのコンタクトの機会の縮小の二つとなる。 そこで、第一の課題に対応して、次年度はオンラインでのデータ収集を進めていきたい。各国でのデジタル化の推進により、オンラインでも中東政治に関する情報収集が可能となってきている。本研究課題と並行し、昨年度はコロナ禍に対応したオンラインでの研究手法実践に関する知見を深めてきた。特に、従来は紙でしか手に入らなかった情報のインターネット上からの収集方法、オンライン上に存在する、中東政治に関する新たな情報源の探索に関して、成果を得た。これを応用し、本研究課題に関わるデータ収集を進めていきたい。 第二の課題に対応して、国内外での研究発表の機会への積極的な参加、論文執筆の強化を行いたい。国際的な移動の困難は続くものの、オンラインでの研究会が世界各地で開催されている。すでにBritish Society for Middle Eastern Studies年次大会での報告が決定しているほか、2021 Tsinghua Area Studies Forumへの発表を申し込んでいる。地域研究者の集うこのような場を利用し、現地研究者とのコンタクトの機会を得て、本研究課題に関する助言の獲得、新たな情報収集の機会の獲得に繋げていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:COVID-19の世界的流行により、国際的な移動が著しく制限された結果、ヨルダン・モロッコへの現地調査を行うことができなかったほか、海外で開催される国際学会が中止され、渡航を行うことができなかった。それにより、出張旅費・現地での物品購入費・研究補助者への人件費・謝金、及び雑費の支出が大きく減少した。
使用計画:国際的な移動に関する状況を慎重に確認しつつ、移動が可能となったならば、現地調査のための出張旅費・現地での物品購入費・研究補助者への人件費・謝金、及び雑費として使用する。移動が可能とならない場合は、オンライン・サーベイの実施のための物品費、人件費・謝金として使用するほか、オンライン書店を通じて現地書籍を購入し、物品費として使用する。
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