2020 Fiscal Year Research-status Report
中国一人っ子世代のジェンダー意識変化と家族役割調整
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20K20067
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田 ゲン お茶の水女子大学, 学生・キャリア支援センター, アソシエイトフェロー (10849061)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジェンダー意識 / 性別分業の再生産 / 家族変動 / 社会主義的近代 / 中国の一人っ子世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国における社会主義的近代を生きる、通称70後と80後世代を対象としたものである。彼らの仕事と家事・育児調整のプロセス及び夫婦間の相互作用を可視化するとともに、中国における家族変動の独自のスタイル、中国若者のジェンダー規範の現在、性別分業の再生産メカニズムを把握することを研究目的とする。2020年度は、主に国内外のシンポジウムへの参加、先行研究の収集及びフィールド調査の準備を進めた。 研究対象地域である中国の山東省師範大学のシンポジウムにて本研究についての考察を報告した。家族社会学及びジェンダー論、特にエージェンシーとして対象者を扱うことで、本研究は中国一人っ子世代を考察する視点として独創性を持っている。それを中国の研究者に共有し、中国の研究者から有意義なコメントを多数得ることができ、本研究の国際的な発信に繋がった。また、COVID-19のパンデミックの社会背景が、中国の家族、就労とりわけ性別役割分業にどのような影響をもたらすかについても考察し、学会発表及び学会誌への投稿を行った。さらに、フィールド調査の実施先の検討・選定、協力者確保などの活動を行い、現地調査及びインターネットを活用したインタビュー調査の準備を進めた。ジェンダー意識、家族関係、中国の一人っ子世代の特徴や家族関係に関する研究は、家族社会学、社会学、文化人類学、フェミニズム論の視点で、日本及び中国において幅広く展開されている。自らの研究と同時並行で、これらの先行研究を収集した上で、日本におけるジェンダー研究のレビュー論文1本、中国一人っ子政策に関する書評を1本発表することもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年初めの世界規模のパンデミックにより、科研費申請時のフィールド調査の予定を変更し、主に文献レビューとフィールドワークの準備を行ったが、ICT機器の活用により国際会議への参加が可能となったため、国際シンポジウムにて報告1本、学会誌報告論文2本、書評1本を発表できた。また、2020年度は、先行研究のデータベース作業を進めたため、2021年度の本格的なデータ収集、分析そして研究発信のためのよい土台を築くことができた。 また、インターネットにおける学術会議の普及により、中国国内の家族社会学の研究者と定期的に研究会を行うこととなった。2021年度もCOVID-19の感染拡大は続いているが、科学研究補助金により、研究環境、設備を整えることができたため、国内外の研究者から有意なアドバイスを得られる環境にある。本研究は着実に進展したと考えられ、「おおむね順調に進展している」とした。2021年度にはさらに本課題を進展させることができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、主にフィールド調査及び研究成果発信を行う予定である。フィールド調査で得られたデータの整理、分析をし、必要に応じて追加調査を行う予定である。COVID-19の感染拡大による家族生活の変化を踏まえつつ、分析を行い、国内外の学会で報告する。そこで収集したコメントや指摘を活かしながら日本語及び中国語、英語で投稿論文を作成し、積極的に研究発信を行う予定である。 また、海外への渡航が困難であるため、やむを得ない場合はインターネット経由でインタビュー調査を行う予定である。しかし、本研究は仕事と家事・育児の役割における調整に注目し考察するため、当事者へのインタビューだけではなく、配偶者、勤め先、親族に対するヒアリング、可能であれば現地調査や、参与観察を積極的に展開する予定である。 ほかに、日本家族社会学会、日中社会学会など、日本国内の学術会議及び海外の学会に参加し、学術交流を行うことによって本研究に関する最新の研究情報を積極的に把握していきたい。
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Causes of Carryover |
COVID-19のパンデミックにより、現地調査の実施ができなかったため、次年度使用額が生じた。2021年度では、COVID-19の状況を踏まえ、現地調査またはインタネットにおけるインタビュー調査の実施環境、設備及び関連図書の充実に使用する予定である。
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