2022 Fiscal Year Research-status Report
民主化失敗以降のアラブ政治変動と穏健派イスラームの国際的思想構築
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20K20070
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
黒田 彩加 立命館大学, 立命館アジア・日本研究機構, 准教授 (90816183)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現代イスラーム思想 / ムスリム知識人 / イスラーム思想 / イスラーム主義 / アラブの春 / 中東地域研究 / シャリーアの目的論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究実績の概要は、以下の通りである。 (1)昨年度に引き続き、アメリカ在住の改革派ムスリム知識人ハーリド・アブルファドルの政治思想について研究を進めた。学会発表と研究報告、単行本所収論文(来年度刊行予定)の執筆を行い、研究成果の発信に努めた。その中で、彼をはじめ、穏健派として知られるムスリム知識人が、単なる過激派批判に終始するのではなく、むしろ、アラブやエジプトの世俗的な近代化に対する批判を主眼としていることを指摘した。これらの穏健派知識人の特徴として、イスラーム的な諸制度や理念を取り入れた市民社会の復興を目指している点、イスラーム的な理念をめぐる公共の言説の充実を目指している点も指摘した。 (2)20世紀後半のエジプトを代表するムスリム知識人であるターリク・ビシュリーの政治・社会思想、歴史観について、日本の知識人との比較も視野に入れながら、成果発信に努めた。英語のみならず、研究対象地域の言語であるアラビア語で研究発表を行い、論文執筆(来年度刊行予定)を完了した。また、2021年に開催した国際ワークショップの成果となる論考集(Society, Politics and Ideologies in the Modern Arab East)の刊行作業を進めたが、ここでも、宗教復興から「アラブの春」の約10年後に至るエジプトのムスリム知識人の状況を論じることができた。 上記の業績のほかに、イスラーム改革思想の20世紀中盤以降の展開に焦点をあて、今後の展望を「シャリーアの目的論」と関連づけて論じた論考を執筆した。当該論文は来年度以降に刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、刊行には至らなかったものの、単行本所収論文をはじめ、論文を複数本執筆することができた。また、学会発表や研究報告の執筆を通じて、これまで研究を進めてきたハーリド・アブルファドルの思想に関する研究の知見を一定程度公表できた意義は大きいと考えている。しかし、研究中断期間があったことなどから、英語・アラビア語文献の講読を当初の予定通りに進めることができず、上記のように自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、アメリカ在住のムスリム知識人であるハーリド・アブルファドルに注目してきたが、研究最終年度は、英語圏の他のムスリム知識人との比較、現代イスラーム政治思想とイスラーム神学の関わりなどについて研究を進める。
また、本研究の一環として翻訳書の出版準備を進め、現代イスラームの思想運動に関する知見を一般に還元することを目指す。
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Causes of Carryover |
ライフイベント(出産・育児)により研究の進捗が遅れたため。
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Research Products
(5 results)