2020 Fiscal Year Research-status Report
文化遺産観光における観光者のパフォーマンスと地域社会との相互作用についての研究
Project/Area Number |
20K20074
|
Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
平井 健文 京都橘大学, 経済学部, 専任講師 (60846418)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 文化遺産 / 観光者 / パフォーマンス / 地域社会 / 真正性 / 継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
主な業績は以下の2点に整理される.ただし,新型コロナウイルスの感染拡大により,研究計画の大幅な修正を余儀なくされた. (1)文化遺産研究(Heritage Studies)の理論研究:現地調査の実施が制限されたため,理論研究から実施することとした.文化遺産に社会学・地理学・人類学的な側面からアプローチする研究者で研究会を組織し,Heritage Studiesの研究動向の整理や,代表的な学術書の邦訳に取り組んだ.これにより,本研究のキーワードであるパフォーマンスや文化遺産の創発性についての理論的整理が可能になった.また,これまでの理論研究の成果を,文化遺産/歴史的環境の社会学に関する教科書の一部に収めて広く公表した. (2)現地調査:3月にようやく1回の調査が可能になり,赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設の職員や同市の市民団体のメンバーへの聞き取り調査を実施した.コロナ禍が施設運営やガイドにもたらした影響を確認しつつ,この1年間における産業遺産保存の現状や市政との関わり,来訪者の動向などについて広く最新の知見を得ることができた.また,赤平市における産業遺産保存に関する行政文書や広報資料,および住友赤平炭鉱の歴史や組合史についての文献・資料も収集した. 本研究で重要な対象としている観光者への調査は実施には至らなかったが,(1)では研究会を組織し継続的に実施する体制を作り,(2)でも基礎資料の収集や,次年度の調査に向けた具体的な打合せを施設担当者と実施するなど,今後の研究の基盤構築は進めることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍で,2020年度に実施を予定していたガイドの参与観察や,観光者への聞き取り調査が一切できなかったため,研究計画を大幅に見直さざるをえない状況になった.上述のとおり,理論研究や施設職員らへの聞き取り調査は実施できたものの,参与観察や観光者の調査は本研究の根幹であり,これらが実施できていない状況では研究は遅れていると判断せざるをえない.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,ガイドの参与観察を実施できるよう施設担当者と打合せを済ませており,研究代表者自らもガイド補助の研修を受けた上で,夏期に調査を行うことを予定している.またこれに合わせて,観光者に対しては,非対面式の小規模な質問紙調査を実施する.加えて,ガイド補助の研修を通して得られる資料のテキスト分析も行う.以上のようにコロナ禍の制限の中でも実施できる調査形態を採用し,フィールドからの知見を着実に積み重ねることを目指す. 一方の理論研究では,研究会の活動を継続し,Heritage Studiesの研究動向の整理や邦訳作業を進めていく.また,隣接分野としての社会学や人類学における,これまでの文化遺産を対象とした研究の成果を整理していく.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により,当初予定していた現地調査をほとんど行うことができなかったため.2021年度に一部の調査を繰り延べて当該助成金を充当する.
|