2024 Fiscal Year Annual Research Report
文化遺産観光における観光者のパフォーマンスと地域社会との相互作用についての研究
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20K20074
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| Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
平井 健文 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (60846418)
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| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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| Keywords | 文化遺産 / 産業遺産 / 観光資源 / パフォーマンス / 観光者 / ガイド / 地域社会 / 集合的記憶 |
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、文化遺産観光の場における観光者のパフォーマンスに注目し、それが地域社会における文化遺産保全の実践にどのように作用するか、そこで創発的に新しい言説や行為を生み出しうるかを検討してきた。2024年度の主な実績は以下の2点に整理される。 (1)遺産研究(Heritage Studies)の理論研究:英米圏での理論的な蓄積を、東アジアの事例にどの程度まで援用できるかを主題に研究に取り組んだ。2023年に刊行した訳書の翻訳過程で得られた知見をもとに、サハリンに残る日本統治期の文化遺産の保存をめぐる力学を考察し、その成果を学会発表、学術論文のかたちで公開した。 (2)現地調査:調査対象地の北海道赤平市における参与観察、聞き取り調査を実施した。継続的な調査を通して、観光空間が公的かつ集合的なものへと変化することで、観光者とガイドの相互作用にも一定の変容が見られること、一方で、観光者の多様性が地域社会の側の行為者に認識されることが、ガイド内容に一定の揺らぎを持たせることを見出した。これらの成果は、2025年に学会発表を通して広く公開する。 研究期間全体を通しての知見は以下のように整理される。まず(1)の理論研究については、近年の研究で提起された主要な視座、たとえばモノの力の重視や文化遺産の「剪定」による集合的記憶の管理、観光の場における創発性などは、研究的にも社会的にも意義のあるものであることを示した。ただ(2)の現地調査を通して、それらが発揮される条件、特に地域社会の構造的な側面についての研究が充分でないことも明らかになった。また、観光の場における創発性は、観光形態とその空間によって大きく左右されるものであり、観光対象としての文化遺産をめぐる新しい言説や行為の生成が為される条件は、非常に限定的なものであることが示唆された。
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