2020 Fiscal Year Research-status Report
レベニューマネジメントに基づくオーバーツーリズムの指標開発とその評価
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20K20080
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小笠原 悠 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (40809844)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オーバーツーリズム / レベニューマネジメント / 季節性 |
Outline of Annual Research Achievements |
観光地における混雑期と閑散期はその観光地における観光需要の季節性と密接に関係している.この観光需要の季節性のパターンを分析することは,複数の観光地や観光施設の観光需要の全体像を把握する上で重要である.また,需要構造の変化によって観光需要の季節性は複数年に渡って変化することが知られている. 本研究では,季節性の変化を幅として考慮した新しい季節性の指標,区間値季節性指標を提案し,我が国の各都道府県における2011年から2019年の宿泊実績に対してこの指標を算出した.更に,この各都道府県から得られた区間値季節性指標に対して,区間値データを用いる階層的クラスター分析を適用することで,我が国における季節性の変化を考慮した上で得られる季節性パターンの類型化を行った.また,季節性の変化を見る統計検定を指標の算出と合わせて行った. 結果として,国外からの宿泊客の季節性が認められた都道府県は国内の宿泊客の季節性の変化が認められた都道府県よりも多く観測された.目的別としても,観光目的の宿泊客が主な施設とそうでない施設では季節性の強弱の違いが認められた.季節性のパターンに対するクラスター分析の結果では,国内の宿泊客の季節性のパターンは都道府県間で顕著な違いが観測されない一方で,国外客の季節性のパターンは,北陸や東北で他地域では見られない顕著な違いがあるクラスターが観測された.これらの結果により,国内客と比較して国外客の季節性は地域により多様性があり,更に,国内の宿泊客の季節性パターンは国外からの宿泊客のそれと比較して全国で画一的かつ固定的であることが示された. 現在はこの結果を論文誌への投稿に向けて執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我が国における観光需要の状況に対する包括的分析として季節性に注目した分析を行ったが,新型コロナウィルスの感染拡大により研究成果発表の形式がオンライン中心へと変化したため,発表の効果が不透明であることから,研究成果発表の実施を次年度へと移動した.しかし,研究成果として日本を対象としたケーススタディーの結果だけではなく,観光需要の季節性に関する新たな指標開発とその応用としての分析方法を示すことが達成できたことから,全体的な達成度の評価としてはおおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は,1) 令和2年度で得られた成果を国内の学会にて報告し,論文投稿の実施,2) 観光地に有用な提案が期待される季節性の分析結果に必要となる詳細なミクロデータの入手,3) 経営資源を対象としたレベニューマネジメントの収益管理モデルを観光地に応用した新たなモデルの開発とその解析の実施を進める.特に2)に関しては,観光需要の季節性が引き起こす問題が比較的大きい観光地のピックアップを行い,その地域の宿泊データを入手することで,都道府県に対して行った季節性に関する分析と同様の計算を適用することを目指す.これにより,本研究にて実施した分析手法の観光地への有用性を検証する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う学会発表のための出張費の使用予定が無くなったため次年度使用額が生じた.次年度は宿泊データの入手費用や論文投稿費として使用する予定である.
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Research Products
(1 results)