2022 Fiscal Year Research-status Report
The Effectiveness of Community-based Tourism as a Form of Sustainable Tourism
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20K20084
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
らなしんは にるまら 奈良県立大学, 地域創造学部, 准教授 (90849663)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 持続可能性 / コミュニティー・ベイスト・ツーリズム / 持続可能な観光 / スリランカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コミュニティー・ベイスト・ツーリズム(Community-based Tourism、以下CBT)の取り組みは実際にどのような側面から持続可能な観光の一形態としての有効性を持つのかを明らかにすることである。この点について、令和4年度に把握する予定だったことが主に三つある;1.スリランカとタイにおけるCBTの実態調査、2.地域コミュニティへのCBTの影響と課題、3.持続可能な観光形態としてCBTの有効性と改善への提言。 1と2に関しては、スリランカにおいて一つの調査地として考えていたHeeloyaで2回調査を実施した。2022年9月以降は、スリランカではCBTと言われてもCBTの要素を深く研究できる観光地は存在しないこと、9月の調査ではHeeloyaのCBTのあり方に関しても課題が生じていること、また、特にコロナ禍の影響で全体として遅れている部分もあるなどの要因で、スリランカにおいていくつかの地域を調査するよりも今まで詳しくみてきたHeeloyaを中心に研究を進めていくことにした。しかし、北部のJaffnaは内戦の影響もあり発展が最も遅れた地域であるため、地域住民と観光の関わり、CBTのような観光形態の有無や導入可能性などを把握しようとJaffnaでも1回調査を行った。 また、3点目に関しては、持続可能性・GSTCなどで先進事例として認識されている日本国内観光地の調査を増やして、スリランカにおいて応用可能な点について考察しようと考えた。その一環として8月には北海道・ニセコ(2020年にGSTCのトップ100選、また2021年にUNWTO Best Tourism Village・BTVに選出)と美瑛町(2022年にUNWTO BTV・Upgradeプログラムに選出)、11月には奄美大島(2020年にGSTCトップ100選に選定)において調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度において今まで研究できなかったタイの調査を予定していたが、ビザ申請の問題があり今年度も調査はできなくなり、また、コロナ禍の影響により全体として研究計画の遅れが出てきている。ただし、スリランカで2回・日本国内で2回調査ができたので、それ以外は順調に進んでいると考えられる。 スリランカにおける調査に関しては、Heeloyaにおいてスリランカの教育機関の学生チームに協力していただき、Homestay + Monitoring programを実施し、村の資源の再確認、観光とコミュニティーの関り、今後の観光振興に当たって直面している問題・チャレンジなどを把握した(SWOT分析も行った)。その結果と共にコミュニティー・地域住民と話し合った結果、きちんとCBTプロジェクトとして進めていく上で欠けている部分があることが判明できた。それ以降は、村に存在しない知識面でのサポートをし、日本などの先行事例から導入可能な点なども考え、地域住民と共に村の持続可能性に資するCBTプロジェクトへと改善していくことにした。この時点では、主にHeeloyaを中心として深く研究していこうとしたので、スリランカの調査協力者とHeeloyaの観光チームと数回に渡るZoom discussionを実施した。 スリランカ北部のJaffanaの調査では、内戦が終わって10年以上経っているところであってもJaffnaにおいて観光はほぼ振興されていなく、特に、地域住民が直接従事できるような観光の形態はほぼ成り立っていないことが分かった。民族間の理解の深まりなども考え、国内観光においてもCBTやHomestayなどの観光形態を推進したほうがよいと思われる。 日本国内の調査に関しては、特に美瑛と奄美大島においてスリランカに応用可能な点が判明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は1年間延長できたことで最終年度となるため、令和4年度で不可能となった課題も含めて研究を進めていく予定である。 主な調査対象地であるスリランカでは、夏期休暇と春期休暇に現地調査を実施しようと考えている。昨年度の調査では、中心的な調査地・Heeloyaにおいて以下の課題が判明できた;1. 観光は再開しても立地などが原因で訪れる観光客は少ない、2.観光客数は一定程度に確保できないと地域住民の関心も薄くなり特に若者はこのプロジェクトを離れていく、3.今までの行政担当者が転勤した結果行政側の関心も既に薄くなっている、4.CBTの理念が薄れて個人的なビジネスとして進めていこうとする動きも現れているなど。全体としては、理想的なCBTを実施・継続することは非常に難しいと思われたので、CBTで直面する課題をどのように乗り越えるのかHeeloyaを中心に考えていきたいと思う。 また、タイにおける調査の場合、夏期休暇を考えている。北部のMae Kampong村の他に首都バンコクに近隣地域においてもCBTを実施している地域があることが分かった。特に、DASTA (Designated Areas of Sustainable Tourism Administration)という公共団体があり、その下で9つのエリアに渡る観光プログラムも存在するので、持続可能性に特化した側面も把握できるのではないかと考える。 最終的に、GSTCを踏まえた小規模なコミュニティに適応可能な独自の指標を新たに開発することも考えていたが、GSTCの基準が高いのでHeeloyaのような村は第一歩として将来的にはUNWTO・BTVを目指したほうが良いと考えられる。そのため、元々企画したようなGSTC指標を開発するまではいかないと思われますが、少なくとも村のCBTプロジェクトとしてのKPIを導入することを心がける。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、本研究課題の初年度である令和2年および令和3年度において、コロナウイルス感染拡大状況により海外渡航はほぼ制限されたことと、日本への再入国も困難だったことで、予定されていた海外調査は全て実施できなくなったことである。令和4年度は中心的な調査地であるスリランカと、その他の日本国内における調査はほぼ順調に進めることができたが、全体として予定していた研究課題・計画に関しては遅れた部分がある。 そのため、令和5年度はスリランカとタイで現地調査を行い、予定していた研究課題を終わらせようと考えている。場合によって日本国内でも追加調査を行い、特に、海外調査の場合は、リサーチアシスタントからも協力していただき、研究を進めていく予定である。そのため、当該残額を英文の図書を購入することなども含めた上記のような令和5年度の研究に使用する予定である。
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