2020 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるVFR旅行の実態と成立プロセスー訪日中国人を事例に
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20K20088
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Research Institution | Tama University |
Principal Investigator |
李 崗 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 専任講師 (60832657)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | VFR旅行 / 知人・親族訪問 / インバウンド観光 / 訪日中国人 / ホストとゲスト / 旅行経験 / 関係性 / 観光人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度では、まず知人・親族訪問を目的とする中国人による海外旅行の歴史と現状について情報収集を行なった。そして、VFR旅行をめぐる研究の現状と動向を把握するため、先行研究を収集しその整理を進めてきた。また、次年度で本格的に行う予定の現地調査に備えて、2020年度では予備調査としてVFR旅行者をホストする経験を持つ日本在住中国人を対象に聞き取り調査を行なった。 ①中国人による海外旅行に関する情報収集:中国政府機関、旅行会社、調査研究機関から関連資料を収集した。1983年に香港への親族訪問の解禁をきっかけに、中国人による海外旅行が本格化した。1990年以降、「新移民」の増加と海外留学ブームを背景に、中国人によるVFR旅行が盛んになってきた。中国人海外旅行において、知人・親族訪問が重要な旅行動機となっていることが明らかとなった。VFR旅行の成立と旅行経験は、ホストとゲストの関係性に影響されることが確認された。 ②先行研究の収集と整理:日本ではVFR旅行が増加している現状とは対照的に、それに関連する先行研究は必ずしも多くとは言えない。したがって、英語と中国語の文献を中心に先行研究を収集・整理し、VFR研究の歴史と研究動向の把握を実施した。政府や旅行業界のVFR旅行への関心度が高くVFR研究が盛んに行われている国の多くは、移民国家であることから、比較の視点から日本のVFR旅行を捉える必要性があることが明らかとなった。 ③VFR旅行の経験者への聞き取り調査:次年度の本調査への準備として、知人や親戚をホストした経験をもつ東京、茨城、京都、大阪在住の中国人を対象に聞き取り調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画段階では、中国人によるVFR旅行に関する情報収集と先行研究の収集・整理を2020年度の主な研究内容とした。VFR旅行に関する文献資料では、VFR旅行の経済的価値、ホストとゲストの相互交渉、VFR旅行と移民、災害後の観光復興、中国人のVFR旅行の推移など多様な視点が存在する。文献調査では、英語や中国語の文献を中心に幅広く先行研究を収集し、取りまとめ作業を現在継続している。 学会への現地参加や、中国人向けの旅行会社への聞き取り調査は、新型コロナウイルスの感染拡大で実現できなったが、国内外の研究者や観光関連団体によって組織された各種研究会、講演会にオンラインで参加し、ほかの研究者と情報交換を行なった。当初の計画にはないが、4つの都道府県在住の中国人を対象に聞き取り調査も実施した。 以上の結果から、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①先行研究の取りまとめを進めながら、2020年度に実施した予備調査のテープ起こしと内容分析を行う。その結果を踏まえて、日本在住中国人を対象とするアンケート調査の準備を進め、2021年度後半に実施する予定である。 ②スノーボール・サンプリングという手法で、親戚や友達をホストした経験をもつ日本在住の中国人の協力者を見つけ、オンラインまたは対面で聞き取り調査を実施する。ホストとゲストの関係性を視野に入れ、中国人によるVFR旅行の旅行経験の形成プロセスについて分析する。その結果を日本観光研究学会などの国内学会で発表し、研究の成果を観光研究関連雑誌に投稿を行う予定である。 ③新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、中国人による訪日旅行が再開する場合、旅行前、旅行中、旅行後の各段階におけるホストとゲストの相互交渉について聞き取り調査を行い、VFR旅行者が日本滞在中に参与観察を実施する。
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Causes of Carryover |
2020年度の計画では、国内で現地開催される学会の全国大会に参加する予定だった。また、2021年度に開始する本調査の予備調査として、訪日中国人観光客を取り扱う旅行会社やVFR旅行の経験者を対象に、対面で聞き取り調査を実施する計画となっていた。新型コロナウイルス感染状況が深刻化し入国規制が厳しくなっている状況のなかで、参加予定の研究集会がオンライン開催に変更されたか開催がキャンセルされ、対面での聞き取り調査の実施も難しくなっていた。そのため、2020年度に使用予定の旅費や人件費は次年度の使用とし、研究集会参加や調査の旅費、論文投稿、学会発表、研究に必要となる物品の購入などに関する費用に当てる予定である。
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Research Products
(3 results)