2022 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるVFR旅行の実態と成立プロセスー訪日中国人を事例に
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20K20088
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Research Institution | Tama University |
Principal Investigator |
李 崗 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 准教授 (60832657)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | VFR旅行 / 関係(guan'xi) / インバウンド観光 / 訪日中国人 / host and guest / 中国人コミュニティ / 親族・友人訪問 / ソーシャルメディア |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、新型コロナ感染症に伴う国境管理がある程度緩和され親族訪問をはじめとする日中の両国間の人的移動が戻りつつあった。こうした状況を踏まえて、これまで行ってきた理論的・方法論的文献整理とオンラインでの調査を継続しながら、対面的インタビュー調査と参与観察を行った。具体的には以下の調査研究を実施した。 ①VFR観光の復興状況:VFR観光はほかの観光形態に比べて災害などの外部要因に左右されにくいため強靭性を持ち、観光地のネガティブな状況からの復興も早いとされる。今回のパンデミックにおいて、日中両国が実施している国境管理策の変化を追いながら、VFR観光の進行状況について情報収集を行った。 ②ソーシャルメディアと中国人の「関係」:コロナで対面的コミュニケーションが制限されるなか、インターネットを介した遠距離交流がその重要性を増していることは言うまでもない。デジタル時代における親密性の変容とVFR観光との関連を検討する必要性から、WeChatに代表されるソーシャルメディアが中国人同士の「関係」構築と維持に果たす役割について、中国人移民コミュニティに着目した社会学的研究を中心に文献調査を行った。 ③VFR旅行の経験者への聞き取りと参与観察:2021年度に引き続き、オンラインでのインタビュー調査を継続して行った。そのうえ、渡航制限の緩和で来日しているVFR旅行者とその受け入れ家族を訪問しインタビュー調査を実施した。在日中国人とVFR旅行者が参加した旅行に同行し、VFR観光の実態について参与観察を2回実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ流行に伴う国境管理の強化で中国人の訪日観光が困難となり、本研究も調査規模・回数を大幅に縮小・縮減せざるを得ず、当初の計画通りに進めることができなかった。予定していたアンケート調査は、コロナ感染症対応をめぐる諸業務の負担増と中国人VFR旅行者の規模縮小で過去2年間実施できなかった。他方、対面でのコミュニケーションが制限されている反面、VFR観光におけるソーシャルメディアの重要性が注目され、本研究に新しい視点を提示してくれた。デジタルメディアとVFR観光に関連する文献整理を行い、オンライン・対面インタービュー調査と中国人VFR観光の参与観察を実施できたため、一定の成果を上げたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
中国から日本への入国規制の緩和により中国人観光者はこれから増加し、親族・友人訪問が今後再び活発化する可能性が高いと予想される。2023年度はVFR観光を取り巻く状況の変化に柔軟に対応し、これまで実施してきた文献研究、オンライン調査を引き続き実施し、対面での聞き取り調査と参与観察の比重を高め、調査データの質と量を向上させる。具体的には、以下3つのテーマを中心に進める予定である。①中国人観光者によるソーシャルメディアの利用とその役割、②中国人VFR旅行者が日本滞在中の観光行動の解明、③パンデミックからの観光復興とVFR観光の可能性の探究。③に関して、可能であればVFR観光者の誘致に取り組んでいる観光地(候補地として別府市)へ現地調査を行う。
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Causes of Carryover |
2022年度は、前年度に続いて新型コロナの影響で本研究プロジェクトは申請時の実施計画を変更せざるをえず、現地調査の規模と回数を縮小・縮減した。次年度は中国人VFR旅行者への聞き取り調査と参与観察の回数と期間を増やし、調査デートの質と量を向上させるように努める。VFR観光に取り組んでいる国内観光地を選定し現地調査を予定している。次年度の研究費は、旅費、物品費、人件費、謝金として使用する予定である。
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Remarks |
多摩大学グローバルスタディーズ学部主催の藤沢市「ホスピタリティ観光セミナー」にて「友人・親族訪問が地域観光を救う?」をテーマに実施した公開講演
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Research Products
(1 results)