2022 Fiscal Year Research-status Report
ダークツーリズムから公共ツーリズムへ:中国における自然災害遺産の保存と活用
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20K20089
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Research Institution | Tama University |
Principal Investigator |
田中 孝枝 多摩大学, グローバルスタディーズ学部, 准教授 (50751319)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ディザスターツーリズム / 東日本大震災 / オンラインツアー / 不確実性 / 防災 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新型コロナウイルス流行の影響を鑑み、調査研究の重点を中国から日本、特に東日本大震災後の震災遺構の保存とツーリズムの展開、およびそれらの中国との関係へと移すこととした。2022年度は、以下3点について文献研究、現地調査、オンライン調査を実施した。 ①日本におけるディザスターツーリズムの展開と海外への発信:東日本大震災後のディザスターツーリズムの展開について、関連情報の収集、文献研究、関係者へのインタビューを実施した。また、感染症や自然災害など多くのリスク/不確実性にさらされている観光ビジネスの動態について、これまでの研究成果をもとに「リスク/不確実性―「不確かさ」とともにある観光のダイナミズム」『基本概念から学ぶ観光人類学』pp.155-165(ナカニシヤ出版、書籍・分担執筆)としてまとめた。 ②中国から見た日本のディザスターツーリズムのもつ意味:①の調査と並行して、中国をはじめとする海外からの訪問者の状況、情報発信、震災後の変遷について関連情報の収集、文献研究、関係者へのインタビューを実施した。また、これまでの調査から、四川大地震後のディザスターツーリズムの展開を「国家のレジリエンス、地域社会のレジリエンス―中国・四川大地震後の復興とディザスター・ツーリズム」『文化遺産と防災のレッスン―レジリエントな観光のために』pp.77-88(新曜社、書籍・分担執筆)としてまとめた。 ③日本におけるディザスターツーリズムのオンラインでの展開:オンラインのツーリズム/プログラムについて文献研究、参与観察、関係者へのインタビューを実施した。「公共ツーリズム」の観点から、大学生とのプログラム参加、彼らへの聞き取りをとおして、オンラインツーリズムそのものの意味と可能性についても調査を行った。これまでの研究成果は、国際学会、国内研究会にて口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの流行により、当初の研究計画を見直す必要性に迫られたが、これまでの研究成果と関連づけながら、研究課題へのアプローチを位置づけなおすことができた。オンラインでの調査手法も模索しながら調査を進めているとともに、2022年度は日本国内での現地調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、以下3点から関連情報の収集、文献研究、現地調査、オンライン調査を進めていく。 ①日本におけるディザスターツーリズムの展開と海外への発信:東日本大震災後のディザスターツーリズムの展開について、関連情報の収集、文献研究、関係者へのインタビューを進める。 ②中国から見た日本のディザスターツーリズムのもつ意味:中国をはじめとする海外からの訪問者の状況、情報発信、震災後の変遷について関連情報の収集、文献研究、関係者へのインタビューを行う。なお、これまでの調査から東北観光における台湾市場の重要性が浮かび上がってきた。台湾とは震災前から観光交流のある自治体が多く存在し、震災後も様々なかたちで交流を継続し、ポスト・コロナのインバウンドとしてまず台湾を挙げるケースが少なくない。また、中国における自然災害遺産の保存や観光での活用においては、台湾での実践が参考にされる側面もある。そのため、中国、日本の二者関係ではなく、台湾を含めた三者関係で状況を把握することが重要と考えられる。渡航制限、および調査の進捗状況に応じて、台湾、中国での現地調査を実施することを検討する。 ③日本におけるディザスターツーリズムのオンラインでの展開:オンラインのツーリズム・プログラムについて文献研究、参与観察、関係者へのインタビューを継続する。特に、全世界的に渡航制限が緩和され、ポスト・コロナの様相を帯び始めた観光現場において、オンラインツーリズムがいかに展開するかを調査する。 上記3点に加えて、ポスト・コロナの中国における観光産業、および日本のインバウンド観光の展開についても注視しながら、調査研究を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により、国内外での調査が制約されたため。次年度からは新たな研究計画に合わせて国内調査の旅費として使用するとともに、状況に合わせて海外調査も実施する予定である。
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