2021 Fiscal Year Research-status Report
「おもてなし」概念の再定義と経済的価値指標の構築-歴史史料からのアプローチー
Project/Area Number |
20K20090
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Research Institution | Hanazono University |
Principal Investigator |
酒匂 由紀子 花園大学, 文学部, 講師 (40822771)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 京都 / 酒 / 酒肴 / ふるまい / 使者 / 観光 / 訪問者 / 中世 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「おもてなし」を歴史史料に即して意味を捉え直し、観光学やメディア、および観光地が有する概念の解釈を再検討することと、「おもてなし」行為の経済的価値の提議を目的とするものである。つまるところ、日本中世後期の古記録を中心とした史料の分析から、日本の「おもてなし」の概念に対する解釈を実証的に解明することである。具体的には、昔の日本が「おもてなし」をどのように解釈し、実践していたのかということを歴史史料と当時の社会構造に即して日本文化発祥の地とされる京都を中心に検討する。その結果を以て、かかる研究や議論、そして観光地へ「おもてなし」の概念に対する解釈の見直しを提言するための土台を築くことを目的とするものである。
今年度の成果としては、まず、日本史研究会大会において「中世後期の「酒屋・土倉」と室町幕府」というタイトルにて報告させていただく機会を得た。これによって、当研究が対象とする時期の政治・社会状況などの検討を提示することができた。 また、メインの成果として、「おもてなし」と同義とされる「ふるまい」について、史料上の用例から当時の人々がどのような意味をこめて「ふるまい」の語を使用してきたのかを検討したところ、「ふるまい」は訪問者に対してなされるものなのではなく、訪問者が訪問先に持参する手土産であったことが判明した。 さらに、「ふるまい」として用いられるものに、しばしば酒が用いられていたことから、宴会以外での酒の利用状況を検討した。当時、使者などの訪問者は、訪問先から酒を提供されて飲んでいたことがわかった。ただし、この酒の提供は、現在でいうところの「おもてなし」ではなく、使者らの得分としてみるべきだろうと考えられる。 以上のような成果を得た。使者への酒の提供については、その意味などに関して引き続き検討を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度も新型コロナウイルス流行の影響が続いていることによって、史料閲覧を予定していた東京大学史料編纂所や国立歴史民俗博物館が閲覧業務を停止しており、計画通りに調査ができなかった。したがって、刊本史料を中心に研究を進めている。 加えて、本研究の結果は、京都がはらむ喫緊の課題であったオーバーツーリズムの解消に結びつけたいと考えていたのだが、新型コロナウイルス流行により、オーバーツーリズムの状況はなくなってしまった。むしろ、現在では観光客の大幅減少こそが問題となっている。よって、帰着点の見直しが肝要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような研究状況に鑑み、引き続き「おもてなし」を歴史史料に即して意味を捉え直す作業を継続する。今年度は、これまで収集した史料(刊本、紙焼き、写真)を中心に分析を行っていく。もし、新型コロナウイルス流行がおさまり、東京方面への史料閲覧が可能になれば利用する予定である。それらの分析をもとに成果を発表できるよう努めたい。 また、当初掲げた研究のねらいについては見直しを行い、成果を社会へ還元できるようにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の論文投稿先は、いずれも論文投稿料が不要の学会であった。次年度の投稿先として予定している学会は投稿料が必要なところや、英文要約料が必要なところである。次年度使用額はそうした代金として充当する予定である。
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Research Products
(4 results)