2022 Fiscal Year Research-status Report
複合差別を克服するための支援者の学習―カナダの先住民女性のコミュニティの事例
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20K20093
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
矢内 琴江 長崎大学, ダイバーシティ推進センター, 准教授 (60732667)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 先住民女性 / フェミニズム / ケベック / 組織学習 / インターセクショナリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マイノリティ女性を支援する現場でより効果的な支援を提供するための実践知の習得のための理論的枠組みを提供するために、カナダ・ケベック州における先住民女性の支援コミュニティの実践分析を行い、マイノリティ女性たちが経験している複合差別を克服する実践における支援者自身の学びのプロセスとその構造を明らかにすることである。 ①本研究は4年間の研究であり、2020年から2022年にかけては、先住民女性の支援コミュニティの取組を、ケベック州における女性運動の中で位置づけ直すために、ミシュリンヌ・デュモン『ケベックのフェミニズム―若者たちに語り伝える物語』(Micheline Dumont, Le feminisme quebecois raconte a Camille, les editions du remue-menagae, 2008)の翻訳を行った(2023年4月出版)。また、マイノリティ女性たちの取組を明らかにしていくために必要なフェミニスト教育観などについても明らかにした(矢内琴江「ケベックのフェミニスト・スタディーズのパイオニア、ミシュリンヌ・デュモンが語るフェミニズム史―フェミニスト教育学の観点からの考察」、『ケベック研究』、14号、177-192、2022)。 ②ジェンダーと植民地支配の観点から、先住民女性に対する暴力とその問題背景をとらえた上で、被害者である先住民女性自らの支援コミュニティの形成・展開過程を明らかにした(矢内琴江「カナダの先住民族女性たちの現在」、第36回北方民族文化シンポジウム 網走、2022年10月15日)。 ③コロナ禍の影響もあり海外渡航が難しかったため、国内の事例をレビューすることとし、生きづらさを抱える若者の支援に取り組む教師たちや、社会教育関係職員の事例を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により海外渡航ができず、当初の計画どおりの研究内容を行うことができていない。 しかし、一方でケベックにおけるマイノリティ女性が経験しているあらゆる差別に対する女性たち自身の実践について、広く一般に公開するため、翻訳を行いその出版をすることができたのは大きな成果であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2023年度は、研究成果の総括をしていく。本研究は、コロナ禍の影響により当初予定していた現地でのヒアリング調査などを実施することができなかった。そこで、文献研究を中心に取り組んできた先住民女性たちの抑圧状況、先住民女性たち自身による実践についてまとめていく。 また、国内における事例の収集を継続する。特に、生きづらさを抱える若者の支援に取り組む教師や社会教育関係職員から、実践事例を収集、記録、分析し、学会発表・論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
翻訳の校正作業に2022年度いっぱいかかり、出版が4月になったため、当初予定していた印刷費の支出がなかったため。 書籍は、2023年4月12日に出版され、今年度はこの書籍をもとに広く成果を発表していく。国内外に、この間の研究成果を学会または論文にて発表していく。 またラウンドテーブルを中心にした国内の実践事例の収集と分析を行う。
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Research Products
(5 results)