2020 Fiscal Year Research-status Report
アジア家族の比較分析に関する方法論の構築―家父長制尺度の妥当性と中間回答を中心に
Project/Area Number |
20K20096
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
伊達 平和 滋賀大学, データサイエンス学部, 准教授 (70772812)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 家族社会学 / 比較社会学 / アジア / 家父長制意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題はアジアにおける家族の国際比較研究の方法論を「家父長制」をキー概念として開発することを目的としている。当初の目標としては、家父長制意識の2つの要素である性別役割分業意識と父権尊重意識の尺度としての妥当性を量的データに基づいて検討することで、アジア社会の家父長制をより精確に測定するための尺度を構築する。本年度の研究成果は2つに分けられるので、2つに分けて報告する。 先ず第1に、今年は先行調査であるアジア家族比較調査(CAFS)について再分析を実施し、データで使用されている性役割意識に関する多様性について、タイ(バンコク)・ベトナム(ハノイ・カントー)・マレーシア(クアラルンプール)・インド(デリー・チェンナイ)・トルコ(アンカラ)について分析を実施し、特にマレーシアとインドにおいては、性役割意識の関連性がほかの地域とは異なるということを明らかにした。この研究成果は2021年度中にディスカッションペーパー、ならびに書籍としての刊行を目指している。 第2に、実施する予定である新規の調査の準備についてのものである。性役割や家父長制に関する尺度を検討している最新の研究をレビューすることで調査項目をリストアップしている。成果としては項目を検討する基準として、伝統主義/平等主義のどちらに言及しているかという視点について、特に平等主義的な視点による項目が弱いという知見が重要であるということが見いだされた、この作業中は現在も続いているが、2021年度の夏を目指して調査票を精査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスによる混乱のため、研究時間が大幅にさかれてしまったことがあり、遅れているのは否めないものの、先行データの解析と、調査の準備が実施できたことで、遅れを食い止めることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針であるが、基本的には当初のとおり進めていく。 まず家父長制意識の2つの構成要素である父権尊重意識と性役割意識それぞれについて、アジアを比較する上で妥当性の高い尺度を開発する。対象は日本・韓国・中国・台湾・タイ・ベトナム・マレーシアの首都圏在住30-40代の男女であり、サンプルサイズは各地域100程度を予定している。調査はインターネットリサーチ会社に登録しているモニターを利用した質問紙調査であり、父権尊重意識と性別役割分業意識について、様々なレベルの質問を20項目程度作成し、因子分析ならびに多母集団同時分析により意識構造を比較する。 次に、家父長制意識尺度を用いて中間回答に対する人々の回答理由についてテキストデータによる国際比較を行う。対象は日本・韓国・中国・台湾・タイ・ベトナム・マレーシアの首都圏在住30-40代の男女、スクリーニング調査で中間回答をしたものに限定、サンプルサイズは各地域50程度を予定している。調査は、インターネットリサーチ会社に登録しているモニターを利用した質問紙調査であるが、日本ではインタビュー調査も併用し、自由記述のテキストデータとインタビューデータをテキストマイニングの手法で分析する。質問は、回答行動に対する回答者の意味付け、その行動の理由、そして中間回答が選択肢に無い場合の回答行動の変化について行う。 調査スケジュールであるが、同時並行的に進めていくが、今後も新型コロナウィルス関連のスケジュールの遅れがあるかもしれないため、まずは2021年度については日本におけるプリテスト、その結果を踏まえて、複数の地域において調査を実施したい。ただし、地域については全ての地域で実施するより、まずは着実に2・3地域での実施を優先する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に関する業務負担の増加により、研究時間が削られ、プリテストを実施することができなかった。 2021年度はプリテストを実施すること、さらに本調査を複数の国で実施することを目標にしつつ、計画を進めていきたい。
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