2020 Fiscal Year Research-status Report
大開口回転体ミラーとマルチスライス法による厚い試料の3次元軟X線イメージング
Project/Area Number |
20K20103
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 明大 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (20781850)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 軟X線 / 回転体ミラー / タイコグラフィ / 磁気イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
先端加工技術によって実現した軟X線用の回転体ミラーは、軟X線集光素子として広く利用されているフレネルゾーンプレートと比較して、集光効率が~100%、色収差がない、長いワーキングディスタンスといった特長がある。本研究課題では、その中でも大開口という光学特性に着目し、X線イメージングの性能向上を目指している。以下の2つの項目に分けて、2020年度の研究実績の概要を述べる。
1.計算機シミュレーションによる開口数と空間分解能の関係解明:タイコグラフィは結像レンズが不要なイメージング技術であり、多数の2次元回折パターンで構成されるデータセットにフーリエ位相回復を適用することで観察像が得られる。回転体ミラーは、試料の上流に設置する照明光学系として利用する。その回転体ミラーの開口数がタイコグラフィ像に与える影響を、計算機によって網羅的に調べた。その結果、試料に入射する光子数が同じであっても、回転体ミラーの開口数を大きくすることで、像質の優れたタイコグラフィ像が得られることが示唆された。
2.磁区イメージングへの展開:SPring-8のBL25SUにおいて、大開口回転体ミラーを照明光学系に用いたタイコグラフィ測定を実施し、X線磁気二色性(XMCD)に基づく磁区イメージングを試みた。試料には、窒化ケイ素薄膜上に蒸着したPt/Co多層膜を用いた。回折パターンの高空間周波数領域に現れる反射ビームに、XMCDコントラストに起因すると考えられる強度変調が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算機シミュレーションによって、回転体ミラーの光学特性とタイコグラフィ像の像質の関係を明らかにできたため。さらに、研究計画の通り、垂直磁化薄膜を利用したタイコグラフィ測定を実施できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
計算機シミュレーションの結果を論文としてまとめるとともに、取得したXMCDタイコグラフィデータの解析を進める。さらに、試料構造をより制御した試料を作製し、タイコグラフィ試験装置の空間分解能や感度を厳密に評価することを計画している。
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Causes of Carryover |
新型コロナの流行により、2020年度前半はSPring-8への出張はもちろん、大学での実験も制限されたため。また、同じ理由で技術補助員の採用も難しかった。2021年度はSPring-8への出張に加え、技術補助員の雇用に予算を活用することで研究を加速させたい。
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Remarks |
https://researchmap.jp/akihiro.suzuki
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