2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20104
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中内 大介 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任助教 (00870049)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シンチレーション検出器 / 単結晶 / 蛍光体 / フォトルミネセンス / ラジオルミネセンス / 放射線計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
シンチレータは放射線照射時に光子を発する放射線計測用蛍光体であり、医療・セキュリティ・資源探査などの分野における産業の発展に伴い、シンチレータ材料の需要が高まりつつある。CeやPrなどの発光中心は5d-4f遷移由来のブロードな発光を示し、Ce:GAGGやPr:LuAGに代表されるようにシンチレータとして盛んに検討がなされてきた有用な賦活剤である。Sm2+は赤色から近赤外域に強い発光を示すことからSi系の光検出器と相性が良いことやチェレンコフ光との区別が容易である点で今後有用となり得る発光中心である。そこで、新たな発光中心としてSm2+に着目しハライド単結晶の合成を行い、その蛍光およびシンチレーション特性の評価により赤色・近赤外発光シンチレータを開発することを目的とした。いくつかのSm2+添加材料の開発を行い、X線およびγ線に対する発光特性を調査したところ、約30,000 photons/MeVの高いシンチレーション発光量を示す材料を見出した。また、フォトルミネセンスでも90%を超える高い量子収率を有しており、赤色蛍光体としても優れた特性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤色・近赤外発光シンチレータを作製するために、還元剤と共にSmを導入したハライド単結晶を作製し、その光学特性の評価を行った。これまでに2価の置換サイトを有するハライド化合物4組成について、垂直ブリッジマン法を用いて結晶育成条件の最適化を行いつつ合成を試みた。大きさ数cm程度の単結晶の育成に成功し、粉末X線回折により、それらの単結晶が目的の構造の材料を有することを確認した。光物性を評価した結果、Smとイオン半径が近い置換サイトを有する組成において、90%程度の非常に高い量子収率で赤色発光が観測されていることがわかった。また、γ線照射時の波高分布解析により、約30,000 photons/MeVの高いシンチレーション発光量を示すことを見出しており、Sm2+添加材料が赤色・近赤外発光材料としてγ線計測に適用可能であることを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で、Sm2+を発光中心とすることで高効率な赤色・近赤外発光を示すことを確認することができた。その一方で合成系中の還元反応が十分に進行せず、一部3価の価数状態で残存するという問題が残った。今後は更に組成探索と共に反応条件を検討しつつ探索を行うことで価数変化を促進させ、発光量の向上を目指す予定である。
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Research Products
(18 results)