2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of design method of nuclear battery applying CIS solar cell with high radiation tolerant
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20K20105
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奥野 泰希 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00805400)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原子力電池 / 銅インジウムセレン / 電子線加速器 / ベータ線 / 太陽電池素子 / 放射線誘起電流 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力電池は、半導体素子上の放射性物質から放出される放射線により発電するため、電力供給が困難な宇宙環境や、ペースメーカなど人体中のデバイス駆動用に長時間安定的に電力を供給するために開発が進められている。半導体素子は、①高耐放射線性、②薄膜、③大面積化、④低キャリア損失、⑤p-n接合型素子が作製可能な素子が必要である。5つの条件を満たす素子は作製が非常に困難であるが、先行研究において、太陽電池素子として開発されてきた銅インジウムセレン(CIS)素子が有望な素子として期待される。CIS素子は、膜素p-n接合型の大面積の電力用途太陽電池薄子として、既に製品化されている素子である。その変換効率は23.4%を達成しており、シリコン系に迫る高い変換効率を有している。また、近年、宇宙用電源としての研究も進められており、1 MeV電子線照射においてほとんど劣化せず、高耐放射線性が示されている。そのため、本研究では、CIS素子を選定し、その放射線発電特性を明らかにすることを目的としている。エネルギー源となる放射線は、線エネルギー付与効率が高く、素子への照射損傷影響が少ない低エネルギー(500 keV以下)β線放出核種に着目している。しかし、日本では放射性物質の入手・取扱で課題があるため、加速器で発生させた放射線により取得した放射線発電挙動をシミュレーション解析することにより原子力電池としての特性を明らかにする開発手法を構築する。本年度は、CIS素子の電子線発電特性を解明するため、大阪府立大学コッククロフトウォルトン型電子線加速器にてin-situ測定の装置を整備し、電子線誘起電流を取得できる体型を構築した。また、電子線照射中の放射線誘起電流を取得し、CIS素子の放射線発電特性について取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、CIS素子により電子線加速器誘起電流の測定を行うことを達成目標としている。そのため、1,CIS素子の準備、2,加速器におけるin-situ測定の整備、3,CIS素子の電子線照射中の電流測定を計画していた。1,CIS素子の準備においては、加速器の試料台に設置し、電極を取り出せる構造を有する必要があるため、ソーラフロンティア製の素子を加工し、形状および電極構造を調整する必要がある。形状は、メカニカルスクライブにより100×100 mmの素子を10×5 mmに調整を行った。電極は、メタルマスクをウォータレーザーにより作製し、形状加工後の素子へアルミニウムを蒸着することで作製した。2,加速器におけるin-situ測定の整備においては、大阪府立大学コッククロフトウォルトン型電子線加速器にて、電流取り出し用のフィードスルーを設置し、試料台に素子電極に接触させるプローブを設置した。3,CIS素子の電子線照射中の電流測定においては、ソースメジャーユニット(B2901A, Keysight)をフィードスルーから取り出した導線と接続し、電子線照射中に発生するCIS素子の電流を取得できる体型を構築した。 上記測定体型を利用することで、本年度は、作製したCIS太陽電池の電子線照射中の電流を取得した。照射中のフラックスは、素子側面に設置した銅板に入射する電子線からグランドに流れる電荷をピコアンメータにより計測することで見積もった。電子銃のフィラメント電圧を変動させることで、電子線フラックスを変化させることで、CIS素子の放射線誘起電流の電子線フラックス依存性を取得した。また、加速電圧を変動させることで、エネルギーを変化させた電子線を照射することで、CIS素子の放射線誘起電流の電子線エネルギー依存性を取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画として、CIS素子の原子力電池としての発電効率を見積もる必要がある。まずは、PHITSを用いた放射線挙動シミュレーションにより、CIS素子中に入射した電子線の付与エネルギーを計算する。また、実験では素子付与エネルギーを変えるため、加速電圧を変動させることでエネルギーを変化させた電子線照射することにより、CIS素子の電子線誘起電流のエネルギー依存性を取得する。この計算結果および、実験結果を用いてCIS太陽電池の放射線付与エネルギーに対する外部量子効率を見積もる。 原子力電池として発電電力を取り出す場合は、電圧も踏まえた議論が必要である。CIS素子は、太陽電池として開発されてきた素子であるため、可視光への感度を有している。そのため、レーザー光源を用いて微弱光源を作製し、CIS素子へレーザー光源を照射しながら、nAオーダからμAオーダまでの電流電圧特性を取得する。そして、太陽電池の発電効率の算出に基づいて最大発電効率の算出を行い、放射線誘起電流の発電効率を解明する。 CIS素子は、発電中常に、ベータ線に晒されることから、その劣化挙動を取得する必要がある。先行研究において、宇宙用太陽電池の劣化モデルとして、変位損傷量(DDD)法が提唱されており、シミュレーションにて素子劣化を予測することが可能となる。DDD法を使用するには、放射線が変位損傷に用いたエネルギーを計算する指標である非イオン化エネルギー損失(NIEL)を計算する必要がある。そのため、NIEL計算を行い、ベータ線で予測される低エネルギー電子線によるCIS素子の劣化挙動を予測する。
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