2021 Fiscal Year Research-status Report
Observation of antiferromagnetic order dynamics by soft x-ray diffraction imaging
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20K20107
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石井 祐太 東北大学, 理学研究科, 助教 (40847232)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 時分割XMCD測定 / 磁化ダイナミクスの直接観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、反強磁性秩序のダイナミクスの実空間イメージングを、最終目標に設定している。本年度は、前年度に引き続き、その前段階であるマイクロ波に誘起された強磁性秩序のダイナミクスに対する時間分解X線測定を達成した。 放射光施設PhotonFactoryでは、パルスX線が0.5GHzで入射されるため、この時間構造を用いることで時分解測定が可能になる。実験では、0.5GHzの放射光RF信号を、逓倍回路により周波数を4GHzに設定し、遅延回路により位相をピコ秒スケールで遅延した後に、試料にマイクロ波として照射した。これにより誘起されるスピン歳差運動の様子を、円偏光X線を用いて観測した。その結果、強磁性体であるPt/FeNi 層状薄膜において、FeとNiの磁気モーメントの歳差運動の様子を実時間で観測することに成功した。また、Niの磁気モーメントの磁化歳差運動における外部磁場依存性を測定した結果、磁化歳差運動の振幅や位相が変化する様子を観測した。この振る舞いは、ランダウ=リフシッツ=ギルバート方程式により理解できることも確認した。昨年度からの進捗点は、マイクロ波の信号を4GHzと高周波領域で時分割測定に成功した点と、時分割XMCD信号の磁場依存性やX線エネルギー依存性まで測定を可能とした点にある。以上のように、磁化ダイナミクスに対する時分割測定手法の確立に成功した。 さらに、集光したX線を用いて、試料をマッピングしながら時分割測定を行うことにも成功している。これは、時分割走査型透過X線顕微鏡(STXM)による実空間時分割イメージングに繋がる重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目標は、反強磁性ダイナミクスの実空間イメージングである。昨年度より強磁性ダイナミクスの実空間イメージングの確立をまず目指している。2年度目である本年度は、時分割測定の確立に成功し、さらに走査型透過X線顕微鏡(STXM)測定と組み合わせた、時分割イメージングも試みている段階である。この測定技術は、強磁性ダイナミクスの直接観測に有効である。さらに、X線回折イメージングにまで、時分割測定を拡張させると反強磁性ダイナミクスの実空間イメージングに繋がる。従って、本年度までに時分割測定を確立できたことは、最終目標である反強磁性ダイナミクスの実空間イメージングの確立も十分視野に入っており、概ね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、時分割測定とイメージング測定を組み合わせることで、時分割イメージング技術の確立を行う。まずは、フレネルゾーンプレートにより集光したX線を用いて、試料を走査しながら透過強度を測定する、走査型透過X線顕微鏡(STXM)によるイメージングを行う。これを用いることで、空間分解能が100nm程度の顕微測定が可能になる。このSTXMに、これまで確立してきた時分割測定を組み合わせると、時分割イメージングとなる。まずは、この時分割STXM測定による強磁性磁化ダイナミクスの測定技術を確立する。その後、反強磁性秩序のダイナミクスに対する時分割イメージングのために、上述した時分割測定と波の位相が揃ったコヒーレントX線を用いたコヒーレントX線回折(CDI)を組み合わせ、時分割CDIの技術を確立する。これにより、反強磁性秩序の周期に対応した回折パターンを観測することで、反強磁性秩序のダイナミクスの直接観測に繋げる。
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