2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on method of product design with "imagination margin"
Project/Area Number |
20K20120
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
影山 友章 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 講師 (90856486)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロダクトデザイン / UXデザイン / 新しいデザイン指標 / 思考の余白 / 不便益 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、従来型の設計思想である“ユーザーが目的を達成するまでの手間や労力を削減すること”とは異なる、新たな設計思想の構築に向けた要件を整理することである。目的達成までの手間や労力によってもたらされる益として知られる「不便益」を生み出すことを目的に、「思考の余白」という新たな設計指標の仮説を用いたデザインメソッドの構築を試みる。 「思考の余白」とは、製品やサービスを使用する際に、ユーザーの意思がどれだけ介在できるのかを示した、製品設計における新しい指標の仮説である。本研究ではその指標を「行動的余白」「時間的余白」「情報的余白」の3つに分類した。また、ユーザーの属性や状態に応じて変化する、許容することができる思考の大きさを、「思考の許容量」と定義し、製品やサービス側の「思考の余白の大きさ」と、ユーザーの「思考の許容量」が適合した時に、「不便益」がもたらされるという仮説を立てた。 そして、2020年11月から2021年2月にかけて実施した学生向けのデザイン実習にそれらのメソッドを反映すること、メソッドの有効性の確認を行った。結果、「不便益」をテーマとしたデザインコンペティション、「JIDA関西学生デザイン賞2020不便益×コミュニケーション」にて、本メソッドによって導かれた学生提案が優秀賞を受賞するなど、一定の成果がみられた。 上記の結果を論文にまとめ、現在、日本デザイン学会に投稿中である。また、第68回日本デザイン学会春季大会にて、本研究の成果を発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた海外での情報収集はCOVID-19の影響により叶わなかったが、オンラインでの研究会参加などを通じて、十分な情報収集ができた。 理論構築のプロセスとしては、「思考の余白により価値を生み出している事例」の分類を行うことで、思考の余白が「行動的余白」「時間的余白」「情報的余白」の3種類に分類できることを確認した。当初、先行研究である「不便益」と本研究のテーマである「思考の余白」の関係性が不明瞭であったが、“「不便益」を生み出すためのデザイン指標が「思考の余白」である”という関係性を整理できたことが、理論面での最大の進捗であった。また、2020年11月から2021年2月にかけて実施した学生向けのデザイン実習で、思考の余白を考慮したデザインメソッドを実践することができた。結果、「不便益」を生み出すことをテーマにしたデザインコンペティション、「JIDA関西学生デザイン賞2020不便益×コミュニケーション」にて、本メソッドを活用した学生作品が優秀賞を受賞するなど、一定の成果が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、デザインの実践活動の中にこれら理論、メソッドを組み込んでいくことで、理論の精度向上、メソッドの効果検証を図っていく。 本年度の具体的なプランとしては、「在宅労働環境のための製品デザイン」の中に、思考の余白を組み込む予定である。在宅ワークにおける問題点として、「ON、OFFの切り替えがしにくい」という点が挙げられる。業務の効率化、省労力化を目指すのプロダクトではなく、在宅ワーク用のプロダクトに対し、思考の余白の理論により「時間」と「手間」をデザインすることで、“プライベートと仕事をしっかりと切り替えるためのトリガー”を生み出すことを狙う。 今年度はメソッドを活用したデザインの実践と並行して、メソッド及び思想の発信も行っていく。前年度の研究成果の論文化、学会発表、理論を発信するためのウェブサイトの構築などを予定している。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、国内及び海外出張が行えなかったため、差額が生じた。
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