2021 Fiscal Year Research-status Report
Place transfer with extended reality technology focusing on meaning and social activity
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20K20121
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
青柳 西蔵 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 講師 (20646228)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 場所 / 仮想現実 / 遠隔授業 / 教室 / 存在感 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、場所の主観的な意味や社会的活動という人的側面を再現することで、場所を、物理的には異なる他の空間へ移植できるXR(仮想現実・拡張現実の総称)システム、場所アバタを開発し、ある場所が元と同じ場所であると感じられる場所同一性の操作可能性を示すことである。 本年度は、まず、初年度に実施した大学における遠隔授業を対象にしたVR(Virtual Reality)場所アバタの開発および評価についての研究成果を、国際学術会議HCII2022において口頭発表した。さらに、ヒューマンインタフェース学会論文誌掲載の原著論文として発表した。 また、大学の遠隔授業を対象としたVR場所アバタの研究を発展させた。昨年度の研究では、大学の教室を場所アバタとして再現する上では、授業を聴講している他の学生を三次元のキャラクタとして再現することが、同じ場所であると感じるために有効であった。この際、学生キャラクタは、うなずき動作か、だらけ動作のどちらかを常にする設定とした。しかし、実際の学生の授業の受講態度は一定ではなく、上記の設定は不自然である。そこで、本年度、うなずきとだらけを交互にする動作を提案し、これをうなずき動作だけをする場合と比較した。その結果、提案手法では授業動画の視聴者維持率が統計的に有意に高かった。 並行して、場所同一性の知覚的要因を抽出する実験ため、三次元ゲーム開発環境Unityを用いて代表者の所属大学の仮想環境化を進めた。現在、実験実施に向けた仮想環境公開の準備を進めている。 また、実世界のある場所を他の場所の上に再現にする混合型場所アバタの設計及び開発を進めた。場所アバタが幅広い場所に対応できる可能性を示すため、昨年度の実験とは大きく属性の異なる1人作業用のPCデスクを対象と定めた。また、PC及びプリンタを用いた事務作業のタスクを考案し、これを実施可能な実験環境を開発中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、場所同一性の要因と実現過程の知見を得ることを目的に、住居や職場の引っ越しを通じて場所同一性を維持した経験がある人を募集し、インタビュー調査を実施した。ところが、その後、新型コロナウイルス感染症の流行が深刻化したため、インタビュー調査を途中で中断し、年度の途中に当初の計画に再度戻した。大学での遠隔授業を実施することになった機会を活かして、学校の教室を対象とした場所アバタを開発し、それを実際の遠隔授業において使用することで評価してその有効性を示した。 次年度は、実世界のある場所を他の場所の上に再現にする混合型場所アバタの開発及び実験を実施予定であったが、実験協力者に直接来訪してもらう形式での実験が必要なため、コロナ禍が継続した状況では実施が難しかった。そのため、システム設計及び開発の段階にとどまり、実験実施には至らなかった。しかし、3年目のコロナ禍の沈静後や小康期に実施すべく実験準備を整えている。 その一方で、上記の場所アバタ研究を発展させ、教室の仮想環境内に表示する学生キャラクタの新たな身体動作手法を提案した。それを、実際のオンデマンド方式の遠隔授業を通して評価して、提案手法において授業の参加割合が高くなることを示した。開発した場所アバタを研究室実験ではなく実際の遠隔授業実践において評価できたことは有益な成果である。 このように、新型コロナウイルス感染症の流行を受けた計画の遅延や順序変更が生じたが、遠隔実験等の工夫により必要な研究を推進できているため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画通り、仮想環境による場所アバタの開発・改善と、拡張現実環境による場所アバタの開発をすすめる。 代表者の所属大学を模した仮想環境を用いて、実際にその大学と関わりの深い大学生を実験効力者として、空間の中で利用者にとって特に意味を持つ物体、社会的活動で特に利用される物体が、場所同一性要因となるという本研究の仮説を検証する。 また、1人でのデスク作業を対象とした拡張現実環境を用いて実世界のある場所を他の場所の再現にする混合型場所アバタの評価実験を実施する。 なお、場所アバタの評価や仮説検証のための実験については、コロナ禍の収束が見えない現状に適した方法を追求する。すなわち、できるだけ、実験システムをWebアプリとして実装して遠隔で参加できる実験にする。どうしても実空間の実験が必要な場合には、実験者と実験協力者の口頭でのやりとりを少なくするように実験の自動化を進める。
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Causes of Carryover |
本年度に拡張現実環境による場所アバタの開発及びその評価実験を進める予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行が収まらず、実験協力者の募集が困難であったたため、評価実験を実施することができなかった。そのため、実験用のシステムの公開費用及び実験協力者募集と謝金の費用について次年度使用額が生じた。 令和4年度には、感染症の沈静化後や小康期に上記の実験を実施するために、次年度使用額を用いる予定である。
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