2020 Fiscal Year Research-status Report
道路ネットワーク分析を用いた災害時における防災地図づくり支援システムの開発
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20K20122
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹之内 要人 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (60822434)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 防災地図づくり / 道路ネットワーク分析 / 避難経路シミュレーション / ヒューマン・コンピュータ・インタラクション / 災害リスクマネジメント / 防災対策支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、当初の研究計画に示した【課題1:防災地図づくりシステムの開発・検証】、及び【課題2:フィールドワークを通した地域の災害脆弱性の分析・モデル化】に取り組み、これらの成果を論文「Effective disaster prevention map creation using road network analysis」(査読付き)にまとめ、国際学会で発表を行った。 【課題1:防災地図づくりシステムの開発・検証】では、先ず始めに本システムを用いた防災地図づくりのプロセス設計を行い、手順を示した。次に地域に潜在するリスク因子を収集するためのデバイスを製作し、デバイスから得たデータ(リスク因子の位置情報、及び主観評価値)をOnline Map上にリアルタイムで可視化させ、その結果を元に災害時の避難経路の検討ができるシステムを構築した。 本システムの防災ツールとしての有用性を検証するべく、東京都が公表している地震に関する地域危険度が高い3つの地域で本システムを用いた防災地図づくりの検証を実施した。その結果、防災地図づくりのプロセス、及びシステムのユーザビリティについて高い評価を得ることができた。また、検証後に実施したアンケートでは、本システムを用いた防災地図づくりは、防災意識の向上させる効果があるとのコメントを被験者から多く得ることができた。以上の結果から本システムの防災ツールとしての一有用性を確認することができた。 【課題2:フィールドワークを通した地域の災害脆弱性の分析・モデル化】では、Space Syntax理論を用いて道路ネットワーク(Int.V値)とリスク因子との関係について分析を行った。その結果、調査地域のリスクの特徴をグラフで明らかにすることができた。本成果は、災害に脆弱な地域の特徴をモデル化するための有用な評価データを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初の実施計画で示した通り、おおむね順調に進んでいる。【課題1:防災地図づくり支援システムの開発・検証】については、おおむね完了しているが、Online Map上で行う災害時の避難経路を検討する方法は、継続してシステムの改良に取り組んでいる。その一つとしてOnline Map上に直接、ルートを書き込む機能や避難場所(目的地)や避難所施設などの位置を示すためのマーカー機能を付加し、防災地図づくりを補助する為のシステム改善を行った。システム改善に伴う検証は既に実施しており、実際に手を動かしながら防災地図を完成させるプロセスは、被験者の防災意識の向上に影響を与えていることが検証結果で明らかにすることができた。 【課題2:フィールドワークを通した地域の災害脆弱性の分析・モデル化】については、2020年度の段階で道路ネットワーク(Int.V値)とリスク因子との関係をグラフに示し、地域のリスクの特徴を明らかにすることができた。一方で、災害に脆弱な地域のモデル化すためにはより多くの地域を調査し、比較するための評価データが必要不可欠である。その為、東京都が公表している地震に関する危険度調査で危険度が高い地域を対象に、フィールドワーク調査は継続して行なっている。尚、フィールドワーク調査では、国内外で感染拡大が広がる新型コロナウィルス感染症対策を鑑み、複数人での調査は取り止め、個別に協力を得ながら評価データの収集を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、前年度から継続している【課題2:フィールドワークを通した地域の災害脆弱性の分析・モデル化】のまとめを行う。先ずはこれまでに各地域で実施してきたフィールドワーク調査で得た地域の評価データを分析し、災害に脆弱な地域の特徴をまとめ、そのモデル化に取り組む。 同時に、システム改良を完了させ、【課題3:システムを用いた防災地図づくりワークショップの実施】に取り組む。尚、国内外で感染拡大が広まる新型コロナウィルス感染症の状況を鑑み、地域住民や大人数での本システムを用いた防災地図づくりワークショップの開催は難しい状況にある。そこで、今後は本システムの検証を実施するにあたり、個別に被験者からの協力を得ながら、本システムを用いた防災地図づくりを体験してもらい、防災ツールとしての有用性についての検証を重ねる予定である。 これらの研究成果については、論文誌への投稿を予定しており、現在では執筆作業を進めている。
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Causes of Carryover |
2020年度は、国内での新型コロナウィルス感染症の感染拡大の状況を鑑み、フィールド調査や実験検証に伴う活動を制限したことで当初に積算した研究費に未使用額が生じた。 2021年度は、感染症対策を十分に行った上で、当初の研究計画で予定していたフィールド調査や実験検証に取り組む予定である。2020年度の研究費の未使用金額については、今後に実施する屋外でのフィールドワーク調査、及びシステム検証で用いる通信端末(モバイルWiFiルーター)の購入に充てる予定である。
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