2021 Fiscal Year Research-status Report
建築デザインの多義性を構成する創造的対話に関する実践的研究
Project/Area Number |
20K20123
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
酒谷 粋将 関東学院大学, 建築・環境学部, 講師 (20772148)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 対話 / 創造性 / 多義性 / デザインプロセス / デザイン方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はまずこれまでの研究で取り組んできた対話手法・ツールの構築について整理し、査読論文として発表したことに加え、昨年度に引き続き多主体による設計の実践プロジェクトを進めてきた。具体的な内容は以下の通りである。 1)VR空間におけるデザインの対話のプロセスの分析 これまでの研究の中で開発したVR空間内で複数の主体がモノを作りながらデザインについての検討を行うための対話システムを用いて設計実験を実施し、そこでの主体間の対話のプロセスを分析し、設計対象となる空間の状況に結び付いた環境の中で対話を進めることによる効果について考察を加えた。その内容を整理し、査読論文として整理・投稿し、採択された。 2)多主体によるデザインプロジェクトの実践・プロセスの記述 昨年度に引き続き、横浜市金沢区にある空き家を学生シェアハウス兼地域拠点としてリノベーションするデザインプロジェクトに取り組んでいる。昨年度は既存空き家の部分的な解体やDIYによる改修作業を行いながら、その空間像の未来像について話し合うワークショップを開催したが、その活動が「ヨコハマ市民街普請事業」の一つとして選定され、令和4年度に横浜市の支援を受けて、地域拠点としての空間を設けるため大きなリノベーションを実施する予定である。そのデザインの検討を行うワークショップに子どもから高齢者まで多様な世代の方々に加わってもらいながら、各世代ならではの様々な意見やアイデアを集め、それをもとにデザインの検討を進めている。また一連のワークショップでの対話記録(発話記録)等のデータをもとにデザインプロセスの記述を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で扱った実験記録をもとにその分析と整理を行ったが、その他に新しいデザイン実験の実施を計画していたにも関わらず実施には至らなかった。一方で実践プロジェクトの進行は横浜市の助成が決定したことも相まって、より本格的な実践プロジェクトとして想定以上に推進することができており、分析の対象となる詳細なデータも着実に蓄積できている。以上の状況に鑑み「概ね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
デザイン実験に関しては今年度、近年精神医療の分野を中心に注目されている「オープンダイアログ」の手法を用いた実験の計画を進めている。この手法によって、クライアントやユーザーといった建築に深く関与する主体が建築に求める根源的な願いや想いを引き出し、それらを一つの建築に同時に共存させるデザインのプロセスやその手法について分析する。実践プロジェクトに関しては令和4年度冬にリノベーション自体は竣工する予定で、それまでワークショップやモックアップ制作、地域の方々の参加によるDIY・DIWO等様々な企画・イベントの実施を予定しており、そこでのデザインの記録を収集しながら、これまでのデザイン実践のプロセスの分析・考察を進める。
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Causes of Carryover |
デザイン実験やワークショップ記録のための機器として、一部のものを既存の機器でまかなえたことで新たに購入する機器が想定より少なく済んだことや、前年度同様に学会発表等のための旅費の支出が学会のオンライン開催等により不要となったことなどが大きな理由として挙げられる。 令和4年度は令和3年度に実施できなかったデザイン実験や既に記録している実践プロジェクトのデータ処理(文字起こし、発話プロトコルのコード化等)の作業を多く予定しているため、もとの計画よりも多くの人件費の支出を計画している。また想定よりも大規模に令和4年度はワークショップを実施する見込みで、そこに多数の物品・記録機器が必要となるため、物品費としての支出も当初計画より増加させる予定である。
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