2022 Fiscal Year Annual Research Report
Action-modulated time perception, autobiographical memory, and time perspective
Project/Area Number |
20K20144
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
今泉 修 お茶の水女子大学, 人間発達教育科学研究所, 准教授 (60779453)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 行為 / 再認記憶 / 主体感 / 運動準備 / 運動実行 / 時間知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
行為主体が自己に帰属される感覚を主体感という。行為とそれがもたらす感覚的事象 (例:ボタン押下が鳴らす音)の時間間隔が実際より短く感じられることがあり,これをインテンショナルバインディング(IB)と呼ぶ。過去の認知神経科学的研究から主体感とIBの関連が示唆されてきた。本研究課題は,主体感とIBの関係,およびより長いスケールの時間的認知である記憶に主体感がどのように影響するかを解明することを目的とした。 初年度は,主体感とIBの関係が相関と因果のどちらであるかを明らかにするため,我々の既存データを確率的因果推論により再解析した。その結果,IBが主体感を規定する因果関係が示唆された。研究期間中に論文として公表することは叶わなかった。第2年度は,主体感と記憶の関係の解明に向けて,行為に応じて現れる単語刺激を再認する実験を行った。行為と単語刺激との空間的一致を操作することで,主体感の強度を操作した。実験の結果,主体感の強度と単語の再認成績との間に関連は認められず,さらに再認を回想と親近性という過程に分けて検討してもなお主体感との関連は認められなかった。この成果は,論文として出版され,また,主体感と記憶の関連を検討する以前に行為が記憶に及ぼす影響をより詳しく検討する必要性を示唆した。そこで最終年度は,運動的行為の準備や実行による再認記憶の促進について検討した。運動の準備と実行を独立して操作する実験課題を開発した。これまでの実験結果から,運動準備と実行の相違よりも,むしろ符号化される刺激が運動準備・実行に先行するか後続するかの相違が重要である可能性が示された。この成果を2023年度以降に論文として公表する予定である。 本研究課題における成果とそれを進展させる今後の研究は,時間知覚や記憶等の認知機能の理解,および感覚的な自己感と概念的な自己観との関連の理解に貢献する。
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