2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K20147
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
上田 祥代 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50771911)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 視点取得 / 身体性 / 自他融合 / 三人称視点 / 身体近傍空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知心理学,および,バーチャルリアリティ(VR)やロボティクスの分野で,人が物理的な身体の制約を超えて,自分の身体の認識や機能を拡張することのできる身体拡張の研究が進展している。しかし,身体拡張の成立要因や,その応用技術の研究が盛んである一方で,身体拡張が可能となった後に,拡張身体を通じてアクションを行う我々の認知がどのように変化するのかという点についてはまだ十分な研究が行われていない。本研究では特に,「三人称視点で観察する全身のバーチャル身体に対する身体拡張」に着目し,通常は自己身体中心座標に基づく空間知覚が,拡張身体を中心とした空間知覚へと変化する可能性について基礎心理学的観点から検討を行うことを目的とする。令和3年度は,1. バーチャルリアリティ環境上の人型アバタによる視点変換促進効果(令和2年度に行った実験)をもたらすメカニズム, 2. 身体化の客観的指標として適切なクロスモダリティタスク, 3. 自己身体の姿勢方向と角度差のあるアバタへの身体化(主観評価と身体近傍空間のリマッピング)について検討を行った。1については,人型アバタによる視点変換の促進効果には,人型アバタの顕著性や自動的なメンタライジング(他者の心的内容理解)ではなく,人型アバタへの身体化プロセスが関わっていることを支持するデータが得られた。この結果はジャーナルにて発表した(Ueda et al., 2021, PLOS ONE)。2については,身体拡張の対象となる身体部位などによっては適切な指標をさらに検討する必要があること,3については,角度差がある場合も自己身体と同期するアバターへの主観的な身体化が生じることが示されたが,主観評価と身体近傍空間との関係については詳細な分析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡張身体の視点の取り込みがどこまで可能なのかという点について,他者としてのアバターの視点取得は非常に速く行うことができ,かつ,それにはある種の身体化プロセスが関わっている可能性を示すことができたことが成果としてあげられる。これにより,身体化の度合いを高める(拡張身体)ことでさらに視点変換が促進する可能性も考えられるため,今後も知見を積み重ねていけるものと期待している。自己の動きと同期するアバター基準の空間知覚の可能性についても,主観評価とクロスモダリティタスクの両方を用いて,角度差の効果を検討する実験に着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,身体化の度合いを高めた拡張身体の視点取得の効率性の検討, 視点取得の効率性を身体化の指標とすることの可能性,拡張身体と自己身体の角度差が身体所有感や身体近傍空間のリマッピングに及ぼす影響,身体性の指標となる新たなクロスモダリティ課題などについて検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
国内、国際学会での研究発表、研究会参加などを予定していたが、全てオンラインでの参加となったため出張がなくなった。また、ジャーナル投稿の費用の一部に所属大学の研究助成を用いることができた。これらに関わる費用が次年度に繰り越されることとなった。令和4年度は、実験協力者や参加者への謝金・謝礼、国内および国際学会での成果発表と情報収集のための参加費および旅費、英文ジャーナル投稿などを予定している。
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Research Products
(3 results)