2022 Fiscal Year Research-status Report
なぜ人は協力できるのか?不確実性下の社会性を支える認知基盤の検討
Project/Area Number |
20K20153
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 友美 (分部友美) 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (80633825)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 協力行動 / 心的状態の理解 / 不確実性の認識 / 社会性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは,他者と関わり合うことをその本質とする,社会的動物である。では,ヒトの社会性を支える基盤とは如何なるものであろうか?この問いについては,これまで「他者の心的状態(考えや感情)を正確に理解する能力が不可欠」と広く想定されてきた。これに対して本研究では,他者の心的状態の理解は原理的に不確実であること,それゆえに,他者の心的状態に関する自身の理解の不確実性を認識することが社会性の基盤となることを新たに提唱する。 2022年度は2021年度に構築した,不確実性下の社会的相互作用課題をもとに社会性の認知基盤を解明することが目標であった。具体的には,囚人のジレンマのパラダイムを応用し,相手に協力してより多い報酬を得るために,相手に裏切られるリスクを冒す行動をとることができるかを測った。ただし,相手が協力的か非協力的かは実験協力者には不確実になるようにしている。同時に,その推測がどれほど間違いないと思うかも答えてもらい,心的状態の推測における不確実性を認識する能力を測った。そして,他者の心的状態を正しく推測する力とその不確実性を認識する力のどちらが協力行動をより強く規定するのかについて明らかにするため,2022年度は2021年度と合わせて63名分のデータを収集した。 さらに2022年度は,実際のPBL科目を活用し,各メンバーの「他者の心的状態の推測における不確実性の認識」,および集団内葛藤と作業成績の関係を縦断的に検討する。これにより,現実の教育場面における社会性に対して不確実性の認識が持つ因果的役割を明らかにするとともに,その知見をもとに社会性を獲得するための教育プログラムへの開発へつなげる。そこで,2021年度に集団内葛藤について測る尺度を開発し,PBL科目にて2021年度と2022年度をあわせて56名のデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験に着手できているが,分析に耐えうる十分なデータを収集することができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
21年度に収集完了するべきであった,遠隔での実験データ収集を進めていく。さらに,当初の予定であったPBL科目でのデータ収集も同時に進めていく。
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Causes of Carryover |
20年度に実験パラダイムを作成し,21年度にデータ収集を終わらせる予定であったが,コロナ禍の影響があり対面実験を遠隔実験に変更せざるを得なくなった。 そこで,新たなパラダイムを組みなおすことが必要であったため,21年度に実施終了予定であった実験が終了せず,22年度も引き続き行わなければならなくなっ た。しかし十分なデータ数がそろっていないため,23年度も引き続き行う必要がある。そのため,実験実施および調査実施に伴う人件費および分析に必要な物品費が必要である。また,これまでの研究結果を報告するため,学会発表費が必要となる。
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