2022 Fiscal Year Annual Research Report
内耳振動現象を解析する高解像光コヒーレンストモグラフィの開発と計測基盤の確立
Project/Area Number |
20K20164
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
太田 岳 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30790571)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 内耳 / 光コヒーレンストモグラフィー / 微小振動 / 感覚上皮帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、哺乳類の聴覚の成立に必須である内耳蝸牛内のシート様組織「感覚上皮帯」に音で誘導される「ナノ振動」を実測し、メカニクスの視点で聴覚の制御機構を理解することを目的とした。そこで、近年海外では光コヒーレンス断層撮像装置を技術拡張した“in vivo振動計測”がモルモットやスナネズミに応用され、制御機構の解明が精力的に進められている。初年度から最終年度までを通じ、実験・解析プラットフォームを構築してきた。 最終年度では計画通りに、難聴モデルマウスまたはマウス蝸牛頂上部における感覚上皮帯の振動計測を実施を試みた。2年目の計画がおおむね予定通りに進んでいたため、生後早期に難聴を呈するマウスにおける振動計測を実施した。 正常な聴覚を持つマウスでは、先行研究において、感覚上皮帯の上部にある有毛細胞層が下部の細胞外基質層よりも大きく振動し、小さな音刺激であるほどよりよく振動が増幅されることが知られている。本年も正常マウスの高周波聴覚を担当する蝸牛基底部において、同様の傾向を実験で確かめられた。一方で、低周波で振動することが報告されている蝸牛の頂上部において、再現性に関して十分な数を担保できていないものの、有毛細胞層の振動振幅が細胞外基質層よりも大きいことが確かめられた。蝸牛の基底部と頂上部の振動は、海外のグループでは別々に評価されてきたが、本研究で構築したプラットフォームでは、どちらの部位に関しても計測が可能であり、広範な聴覚周波数レンジを誇る動物種への汎用性が高まった。難聴マウスにおいては、有毛細胞層における振動の増幅現象が認められず、内耳の機能不全の有無を振動計測の視点から診断できるようになった。以上から、当初計画していた解析プラットフォームは完備なものとなり、今後の聴覚計測機器として実装することができた。
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