2020 Fiscal Year Research-status Report
立体的薬物動態システムを利用したがん細胞の薬物耐性変化のモニタリング
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20K20171
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
宮本 大輔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (10845481)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薬物動態システム / Organ on a Chip / 癌細胞スフェロイド / 物質拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト肝細胞ならびに腸管上皮細胞を共培養させた薬剤排泄システムを構築するとともに当システムによって代謝された抗癌剤ががん細胞スフェロイドに対する薬剤応答性を評価するため、各システムの構築ならびに使用薬剤濃度の検討を実施した。 まず肝細胞と腸管上皮細胞を混合させた条件で培養した結果、各々の単培養に比べ代謝系トランスポーター発現が低下した。さらにインサート膜のような多孔質上では肝細胞ならびに胆管上皮細胞単独では十分に細胞伸展できず三次元的に凝集する細胞系を示した。そのためインサート膜上に肝細胞あるいは胆管上皮細胞組織を形成させるために線維芽細胞あるいは脂肪組織由来幹細胞を共培養させた。肝細胞と線維芽細胞の共培養化では肝細胞が敷石状を維持しながらその周辺を線維芽細胞によって支持された細胞形態となった。さらに腸管上皮細胞と脂肪組織由来幹細胞(あるいは線維芽細胞)を共培養化させると腸管上皮細胞がオルガノイドのような立体構造様形態を示しその周辺で脂肪組織由来幹細胞あるいは線維芽細胞が伸展する細胞形態であった。腸管上皮細胞の機能発現に関しては共培養する細胞種による影響はなかった。 次に、ターゲット細胞として子宮頸がん細胞株であるHeLa細胞を用いて薬剤応答性を評価した。まず2次元培養化にてカフェインならびにシスプラチンを様々な濃度で添加すると、添加濃度が高まるにつれて細胞剥離していった。この時のLC50を比較した結果、薬剤の違いによって薬剤応答性に違いがあることが明らかとなった。またHeLa細胞を単層培養(2D培養)ならびにスフェロイド培養(3D培養)させ、培養3日目にシスプラチン含有培地を添加し細胞形態を比較した。単層培養化では接着したHeLa細胞が剥離し細胞数の減少が見られ、スフェロイド培養ではスフェロイド縁側にて崩壊現象が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は、ヒト肝細胞ならびに腸管上皮細胞を共培養させた薬剤排泄システムの構築ならびに抗癌剤添加における癌細胞スフェロイドのアッセイ評価法の確立であった。本年度の取り組みにおいて、薬剤排泄システムのトランスポーター発現が向上する培養条件を評価し、一定の培養条件の確立に成功した。具体的にはインサート膜上に肝細胞ならびに線維芽細胞、ならびに腸管上細胞を間質細胞(脂肪組織由来幹細胞、間葉系幹細胞、皮膚来線維芽細胞)とともに播種することで多孔質上にてコンフェレント状態の細胞システムを構築可能であり、肝細胞と腸管上細胞は立体的構造を有した。さらに、HeLa細胞においては単層培養とスフェロイド培養にて薬剤応答性に違いがあることを示し、また抗癌剤として期待されているカフェインにおいても濃度依存的応答性を示すことができた。これらの結果は投与後の抗がん剤応答を生体外で模倣することを目的とした本研究において、重要な知見を示すものである。 これらの実施内容は当初の計画通りに進行しており、本研究目標の第1段階をクリアした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の成果をもとに、肝細胞/腸管上細胞の薬剤排泄システムの構築、ならびに癌細胞スフェロイドにおける抗癌剤刺激のアッセイ評価法の確立を試みるため、以下の2つの検討を実施する。 (1)薬剤排泄システムの構築:インサート膜上に肝細胞層(肝細胞+線維芽細胞)を作製後、腸管層(腸管上細胞+間質細胞)を播種し薬剤排泄システムを形成する。構造解析として免疫蛍光染色、機能解析としてPCR法によるトランスポーター発現の解析を実施するとともに、薬剤透過性に関しても蛍光試薬を利用して評価する。 (2)抗癌剤刺激のアッセイ評価法の確立:スフェロイドプレートにて形成したHeLaスフェロイドに対して低濃度ならびに高濃度で抗がん剤(カフェイン等)を添加しスフェロイドサイズの変化ならびに生死染色による評価の関係性を明らかにするとともに、当システムに使用するアッセイ法を確立させる。画像解析によって十分な評価が見込めない場合は障害性液性因子をELISA法等にアッセイ法を変更し、最適なアッセイ法を確立させる。
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