2022 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ転写装置を介したクロマチンの力感知メカニズムの解明
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20K20180
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牧 功一郎 京都大学, 医生物学研究所, 助教 (90849233)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | クロマチン / 一本鎖DNA / 力学計測 / 原子間力顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞による力感知機構の解明を目指し、特に、ゲノムDNA・核内クロマチンの力学動態に着目し、基盤となる技術の開発を行った。研究の結果として、2つの成果が得られた。 (1)細胞内における in situ の一本鎖DNAマッピング手法の開発 細胞が力を感知する機構として、本研究では、二本鎖DNAが一本鎖DNAに解離する現象に着目した。これまで、分子レベルの再構成実験により、DNAが力のもとで解離する機構が示されており、細胞内の力学環境においても、力のもとでの二本鎖DNAの解離が、遺伝子転写の直接的な制御機構として力感知に寄与する可能性が示唆されてきた。しかしながら、細胞内の一本鎖DNAをマッピングする手法はこれまで提案されておらず、直接的な検討が進められてこなかった。本研究では、細胞内における in situ の一本鎖DNAマッピング手法を開発し、その妥当性を確認した。さらに、同手法が生体組織レベルのマッピングにも有用であることが示された。今後は、同手法を基盤として、細胞・多細胞組織が力学環境に適応するナノスケールのメカニズムの解明を目指す。 (2)骨細胞の老化にともなうヒストンクリッピング現象の発見 力を感知する代表的な細胞として、骨組織に埋没した骨細胞を取り上げ、老化にともなう力感知機能低下メカニズムの理解を目指した。原子間力顕微鏡を用いた力学測定にもとづき、骨細胞の老化にともない、エピジェネティックな反応の起点となるヒストンの末端が切断されるヒストンクリッピングと呼ばれる現象が生じていることを見出した。本結果から、ヒストンクリッピングによるクロマチン動態の変化が骨細胞の力感知機能低下に結びつく可能性が示唆された。
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