2020 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of efficient and economical myocardial regeneration therapy using artificial G-CSF receptor.
Project/Area Number |
20K20206
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
植山 萌恵 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (60844280)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人工受容体 / 多能性幹細胞 / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症心不全に対する、iPS細胞を用いた再生療法が期待されている。G-CSFなどの増殖因子は心筋細胞分化促進効果や心筋保護作用などを有しており、これらの因子によるシグナル伝達を制御することは、iPS細胞からの効率的な心筋細胞誘導だけでなく、移植後の生着効率の改善にも繋がると考えられる。しかし、増殖因子の生体投与は移植細胞以外にも作用するため、その副作用が懸念される。さらに、生体で安定して作用する組換えタンパク質の精製は困難かつ高額である。そこで本研究では、申請者らが最近開発した小分子応答性人工受容体の生体における安定性・低毒性・安価といった強みを活かした次世代型心筋再生療法の開発を目指す。そこで、研究代表者らが最近開発したG-CSF人工受容体を発現するiPS細胞株から心筋細胞を作製し、これを心臓へ移植する。さらに、G-CSF人工受容体を直接心臓へ導入する実験も試みるなど、次の3つのテーマに沿って研究を開始した。(テーマ1)G-CSFに対する人工受容体を発現するiPS細胞株の特性解析。(テーマ2)G-CSF人工受容体発現ベクターの成体心臓への注入による遺伝子導入効率と代替リガンド投与による生体内でのシグナル伝達活性の検証。(テーマ3)代替リガンド投与による移植後生着率と心機能の解析による心筋再生効果の検証。 現時点では、テーマ1のiPS細胞株の特性解析が終了し、テーマ2を行うための、予備実験の段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、テーマ1であるG-CSFに対する人工受容体を発現するiPS細胞株の特性解析を行った。 はじめに、G-CSF人工受容体発現iPS細胞株において、G-CSFシグナルの活性化を定量化する目的で、STAT3依存性の転写活性をレポーターアッセイにより解析した。さらに、STAT3の活性化をタンパク質レベルで検証する目的で、リン酸化状態についてウェスタンブロットを用いて解析を行ったところ、代替リガンドであるBSA-FL(Fluoresceine-conjugated bovine serum albumin)の刺激により濃度依存性にリン酸化が亢進することが確認された。さらに、STAT3の活性化は未分化iPS細胞において自己複製を促進するため、人工受容体発現iPS細胞株において、BSA-FLリガンド刺激により未分化状態が維持されるか否かについても検証した。未分化細胞コロニーの形態とアルカリフォスファターゼ活性を反映する染色方法により評価したところ、未分化性維持に必要とされる白血病阻止因子(Leukemia inhibitory factor, LIF)を添加した態では、境界明瞭かつドーム型の円形コロニーで染色性も強いものであった。一方で、LIFの代わりに、BAS-FLを用いると、染色性はある程度保たれたものの、コロニー形態から未分化性の維持は部分的なものと考えられた。一方で、分化培養過程でBSA-FL刺激をおこなうと、G-CSF刺激と同様に、心筋細胞への分化効率が亢進することが、免疫染色、遺伝子発現解析などの結果から見いだされた。最後に、次年度へ向けて、マウス心筋梗塞モデルを確立し細胞移植の予備実験も行ってきた。 コロナ禍の影響で研究時間の制約など若干の制限があったものの、上記の理由から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、G-CSF人工受容体を安定発現するiPS細胞株の特性解析の結果をもとに、シグナル活性化や心筋細胞分化をルシフェラーゼ発光で評価できるレポーターiPS細胞株を用いることで、効率的な心筋細胞誘導に加え、移植効果の高い心筋再生療法の基盤とその評価系を構築することを目的とし研究を推進する。 in vivoでの動物実験を中心に、以下のようにテーマ2と3に関する研究を進める。 (テーマ2)A. 人工受容体発現iPS細胞由来心筋細胞の心筋梗塞モデルへの細胞移植実験を行う。すなわち、ルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子を発現する人工受容体発現iPS細胞から心筋細胞を誘導し、これを心筋梗塞周囲巣へ移植し生着効率を評価する。B. 人工受容体発現ベクターの成体マウス心臓への注入とシグナル伝達活性を検証する。すなわち、人工受容体発現ベクターを成体マウスの心臓へ直接注入し、遺伝子導入効率やSTAT3のリン酸化レベルを指標に代替リガンド投与後のシグナル伝達活性を評価する。 (テーマ3)A. マウス心不全モデルへの細胞移植による心筋再生効果を検討する。ここでは、人工受容体を発現する心筋細胞移植後のマウスに代替リガンドを投与することで、移植細胞のみにG-CSFシグナルを一過性に活性化させる。心不全の改善効果の有無を心エコーや心カテーテル法などの生理学的に解析するとともに、G-CSFシグナル活性化に伴うアポトーシス抑制や炎症反応が人工受容体を発現した組織に特異的に生じるか否かを、TUNEL法、Caspase3のウェスタンブロッティング、好中球やマクロファージなど浸潤細胞の免疫組織染色(あるいは酵素組織染色)で検証する。B.成体心臓へのG-CSF人工受容体導入による心筋再生効果を検討する。先述のAと同様の実験により心機能改善効果を評価し、病理組織学的な解析も行う。
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