2022 Fiscal Year Research-status Report
超音波による肝臓腫瘍のリアルタイム自動診断システム構築に関する研究
Project/Area Number |
20K20214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三原 裕一郎 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (80789561)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超音波画像 / 転移性肝癌 / ディープラーニング / 自動診断 / 肝細胞癌 / AI / 造影超音波 / リアルタイム |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、ディープラーニングを用いて肝臓超音波画像から腫瘍を抽出するシステムの構築を行った。 本年度までに肝臓手術中の術中超音波で得られた動画・静止画の画像に含まれている解剖学的構造物をディープラーニングを用いて、自動的に識別するソフトウェアの開発をおこなった。第1段階として、腫瘍・解剖学的構造物の自動識別をFaster RCNNを用いて腫瘍識別を行った。腫瘍の識別は一定の程度で行うことができたが領域の提示手法や識別精度などには課題が残った。このため、画像の識別手法ををMasked RCNNに発展させて、研究の遂行を行った。これにより腫瘍・解剖学的構造の識別精度・提示方法が改善した。また、元画像にデータに処理を加えて学習を行うことで精度が向上することも確認できた。 本年度はさらに識別制度の向上と腫瘍識別後の腫瘍の性質診断を自動化するアルゴリズムの開発を中心に行った。超音波診断での腫瘍診断には造影剤の使用が不可欠であるため、肝臓手術中に得られた造影超音波画像を使用した。造影超音波画像では造影剤の局在を提示する造影像と位置情報の提示を主目的としたモニター像の2画面を同時に提示させることができる。これまでに作成したプログラムを用いてモニター像上の腫瘍を検出し、ピクセル毎に対応する造影像の特徴を識別させて特に転移性肝癌の診断を行うことに成功した。本成果は一連のアルゴリズムを特許として申請中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載のごとく、本研究では研究を「第一段階:存在診断、第二段階:質的診断、第三段階:位置診断」の三段階にわけて設定している。 昨年度まではとくに第1段階の腫瘤の「存在診断」を中心に研究を行い、ここまでの成果を後述の論文・学会で成果を発表した。 第2段階の「質的診断」については、第一段階で得られた知見を造影超音波に応用し独自に開発したアルゴリズムを用いて腫瘍の局在評価のみならず第一段階で識別された腫瘤の性状診断を行うことを中心に研究を進めた。対応するモニター像と造影像を比較するアルゴリズムを設定することで、特に転移性肝癌の診断に有効であることが確認できた。本成果は一連のアルゴリズムを2022年度に特許出願した。 第3段階の「位置診断」については、もともとは認識した腫瘍がどの肝臓区域に存在しているのかを診断するシステムの開発を目指していた。しかしながら、経腹部超音波と比較して、術中超音波ではプローベの位置・角度によって得られる画像のパターンが無限であり区域を分類することは現実的ではないことが確認できた。一方でこれまでの成果でグリソン・肝静脈・肝外構造物をそれぞれ識別することが可能であるため、術中に得られた超音波画像中のグリソン・肝静脈を腫瘍と同時に提示して肝内構造物と腫瘍の位置関係を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究では術中動画を記録した後に、動画そのものを解析して検証していた。手術中のリアルタイム動画を解析するには現時点で使用しているPCでは処理速度の問題から高フレームレートでの解析では若干のタイムラグが生じることも判明した。このため、GPUでの処理能力の高いPCを使用することで高フレームレートでもタイムラグのない解析が行えるか検討する。 また2023年度はこれまでに得られた成果の発表をすすめる。 2023年6月にフランス・リヨンで行われるE-AHPBAにて本成果を発表する。 また、本研究で得られた成果は現在特許に出願中である。
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Causes of Carryover |
本年度までの研究では昨年度までに購入したPCを用いて術中動画を記録した後に、録画動画を解析して研究をすすめていた。本年度の後半にようやく現時点で使用しているPCでは処理速度の問題から高フレームレートでの解析では若干のタイムラグが生じることも判明した。このため、GPUでの処理能力の高いPCを使用することで高フレームレートでもタイムラグのない解析が行えるか検討する。次年度は最終年度であるが、臨床応用検証のため予算をPCの購入に充てたい。 また2023年度はこれまでに得られた成果の発表をすすめる。現時点で決定している学会は2023年6月にフランス・リヨンで行われるE-AHPBAである。残存予算は学会参加・渡航費にも充てたいと考えている。
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