2020 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化に対する安全なバルーン血管拡張術のための血管壁繊維破断モニタリング
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20K20228
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小川 恵美悠 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (50775020)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動脈硬化治療 / バルーン拡張術 / 術中モニタリング / 血管壁塑性変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
治療中の繊維破断モニタリングによる、副作用を抑えた安全なバルーン血管拡張術を実現するための基礎検討として、バルーン拡張圧と血管壁変性、血管壁塑性変形により生じる機械信号計測について調査を行った。これまでの治療でパラメーターとされてきたバルーン印加圧を0.8 MPaまで連続的に加圧した際の、実際の血管内径変化を調査した。バルーンに対する印加圧は、バルーンの特性、血管壁の硬さ、血管周囲組織などに影響される。健常なブタ頸動脈を使用し、拡張前の血管内径で正規化して評価を行った。拡張開始とともに約1.4倍まで急激に血管内径が拡張された後、バルーン拡張圧の増加に伴い緩やかに血管内径が拡張し、最大1.7倍まで内径が拡張された。また、バルーンを収縮させたあとも内径は1.4倍以下に低下せず、これは血管壁に不可逆的な塑性変形が生じたためと考えられる。塑性変形の原因は血管壁繊維破断であると考えられ、拡張後の血管壁断面のHE染色画像から間隙の面積を解析し、間隙の数と1つあたりの平均の面積を算出した。0.2 MPaと0.8 MPaでの比較では1つずつの間隙の平均面積は変わらないものの、圧力が高いほど生じた間隙の数が大きくなった。続いて血管内径が2-3 mmのブタ健常頸動脈を用い、バルーン印加圧を14 atmまでステップ状に印加したときの繊維破断の発生を、アコースティックエミッションセンサを用いて計測した。5秒間に1.4 Mpaまで連続的に加圧し、加圧状態を30秒保持して減圧した際の、加圧開始から減圧終了までの計測を行った。バルーン拡張中はバルーンのフィルムが広がる際のノイズが計測されたが、加圧を保持している状態において、数千Hz帯の信号ピークが取得された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、治療中の繊維破断モニタリングによる、副作用を抑えた安全なバルーン血管拡張術の実現である。その基礎検討として1)バルーン拡張圧と血管壁変性の調査、2) 血管壁塑性変形により生じる機械信号計測、3) 適切な血管壁塑性変形条件の検討を行う。本年度は1)バルーン拡張圧と血管壁変性の調査2) 血管壁塑性変形により生じる機械信号計測の検討を進め、成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
血管とバルーンの界面圧力の測定および電気的特性変化の計測を行う。ブタ健常頸動脈を用い、バルーン印加圧を14 atmまでステップ状に印加したときのバルーンと血管壁の界面圧、血管内壁圧力、インピーダンスの計測を行う。摘出血管に対して過拡張を起こすことでバルーン拡張圧の血管壁破断条件を明らかにし、血管壁破断が生じる際の破断およびその前後に生じる機械信号を計測する。これにより術中に過度な塑性変形を起こすことを事前に検知できるモニタリングシステムを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で国際・国内学会に中止やオンラインへの変更が生じたため、旅費の支出がなくなった。実験内容の変更を受けて次年度の物品費用として使用予定である。また、物品購入に際しても同様に納期に影響が出たため一部購入時期の変更が生じた。
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