2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集に伴い意図せず編集されうる塩基配列条件の解明
Project/Area Number |
20K20255
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
山下 拓真 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 流動研究員 (10866528)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / オフターゲット変異 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、幅広い遺伝性疾患を根治可能な遺伝子治療として、CRISPR-Cas9システムによるゲノム編集技術の応用が期待されている。しかしながら、標的配列と類似した配列を持つ目的外の部位での変異 (オフターゲット変異)ががん化等の副作用を引き起こしうることから、安全性上の懸念となっている。 このような背景を受けて、本研究では、オフターゲット変異を起こしうる塩基配列条件を明らかにすることを目的として研究を行う。このために、標的配列をあえて特異性の低い配列に設定することで、多数のオフターゲット変異候補配列を同時に評価する。また、ヒト1倍体細胞株から抽出した均一なゲノムDNAを実験に用いることで、シンプルな系で、簡便かつ高感度に切断部位の解析を行う。 本年度においては、ヒトゲノム中に完全相補となる配列は1つであるが、1塩基以上のミスマッチがある配列が多数存在する21塩基を標的とするガイドRNAを配列検索ソフトウェアであるGGGenomeを用いて複数種類設計した。設計したガイドRNAをそれぞれ調製し、Staphylococcus aureus 由来 Cas9 (SaCas9) との複合体が標的配列を持つDNA断片を切断する効率を評価することで、標的配列で十分な切断活性が得られるガイドRNAを選定した。その後、ヒト1倍体細胞であるHAP1細胞から抽出したゲノムDNAに対して、選定したガイドRNAとSaCas9の複合体を作用させ、高速シークエンス解析により切断点検出のためのデータを取得するためのサンプルを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、ガイドRNAの設計・切断効率の評価を行い、特異性の低いモデルのガイドRNAを選定し、選定したガイドRNAを用いてゲノムDNAを切断、その切断点を検出し、切断された配列がどのような配列であるかを評価する計画であった。 本年度においては、新型コロナウイルス感染症の流行によりわずかに遅れが生じたものの、特異性の低いガイドRNAの設計を行い、in vitroでの切断効率測定によるガイドRNAの選定を完了した。さらに、解析に用いる1倍体細胞から抽出したゲノムDNAに対して選定したガイドRNAとSaCas9の複合体を作用させ、高速シークエンス解析に供するサンプルを作製した。 このように、来年度速やかにシークエンス解析、切断点の配列の特徴解析を行うことができる状況が整っていることから、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に作製したサンプルのシークエンスデータを取得し、そのデータを解析することによって、SaCas9とガイドRNAの複合体による切断点を検出する。 続いて、切断点の配列を、ガイドRNAとの相補鎖形成部位およびCas9が認識するPAM配列におけるミスマッチやギャップの数、位置、種類等について分類し、どのような配列が切断されやすいかについて評価する。
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Causes of Carryover |
本研究では、シークエンス解析、そのデータ解析を行うために多額の費用が必要である。本年度は、これらの前段階のガイドRNAの設計からサンプル調製までの工程を行ったが、上記のような費用を必要とする解析はすべて次年度に行うため、予算の大部分は次年度に使用する計画である。
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