2020 Fiscal Year Research-status Report
定量的な嚥下・呼吸音のモニタリングによる嚥下機能の評価
Project/Area Number |
20K20256
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
倉本 尚美 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20852479)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 嚥下機能の評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
食物や唾液が上手く飲み込めない嚥下障害により、誤嚥性肺炎を発症する高齢者が多くみられることから、嚥下機能低下の早期発見が重要な課題となっている。しかしながら、在宅療養や高齢者施設では、医療者の熟練技術や医療機器に依存せずに嚥下機能を評価ができる方法がない。また、評価指標となる音の長さや嚥下状態について数値的な記録ができないため、時間にともなう嚥下機能の変化が客観的に把握できないため、嚥下機能の評価について基準を策定することが困難である。 本研究では、回復期病棟に入院中の高齢者に対して頸部装着型のウェアラブルデバイス(GOKURI)により嚥下音と呼吸音を定量的データとして計測し、身体の回復に伴う経時的な嚥下機能の変化を検証し、かつ臨床活用に有用な嚥下評価の確立をめざす。使用するウェアラブルデバイスはスマートフォンに接続したネックバンドを頸部に装着するだけで音響計測ができ、侵襲性が低く、また日常生活中に嚥下活動が計測可能であるためモニタリング機器として活用しやすい。加えて、嚥下音に基づき、嚥下時間、嚥下回数、嚥下時間の平均をリアルタイムで表示し、また計測した音響データはパソコン等で分析が可能である。 当該年度は、以下の手順で研究を進めた。1) 回復期病棟の医師・理学療法士と協同しながら、実験参加者に負担が少ない方法によって継続的に嚥下機能の測定を実現できるプロトコル作成をおこなった。2)本実験の準備段階として、病院内にて臨床実験を担当する医師や理学療法士に計測機器GOKURIおよび舌圧計、口腔水分計(ムーカス)使用に慣れてもらった。3)数名の被験者に対してパイロットスタディを実施し、プロトコルの確認および計測の流れを確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本実験の準備およびパイロットスタディ終了後に、当該年度で本格的に臨床実験を開始予定であった。しかしながら、新型コロナウィルスの感染が拡大したため、回復期病棟に入院中の高齢者を対象に約3ヶ月間にわたり実験を実施する本研究を行うことは、感染予防および医療従事者の負担の観点から現実的ではないと考え、本実験の実施を見合わせる結果となった。 臨床実験の開始以外では、当初の計画どおりに経過している。回復期病棟の医師および理学療法士と共に、継続的に嚥下機能を測定するため、被験者選定・実験手順・データ保管方法などを含めた包括的なプロトコル作成をおこない、実験開始に必要な倫理審査も承認された。また、臨床実験を担当する医師や理学療法士の多くは計測機器GOKURIおよび舌圧計、口腔水分計(ムーカス)の使用経験がないため、被験者使用前に十分に慣れてもらうことができた。また、数名の被験者に対してパイロットスタディを実施し、プロトコルの確認および計測の流れを確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度の実験準備をもとに、コロナ感染予防および医療従事者の負担について考慮しながら、回復期病棟に入院中の高齢者に対する計測を開始し、嚥下・呼吸データの計測および分析を開始する予定である。 (1) データ測定:脳卒中発症後に回復期リハビリテーション病棟に入院している高齢者を対象とし、入退院時にVEとVF検査、また言語聴覚士により1週間に1回程度の頻度でGOKURIによる計測と頸部聴診法を実施する。 (2) 医療従事者による主観評価:対象者の嚥下機能の変化を感じたタイミングとその理由を医療者に記録してもらう。 (3) 嚥下機能変化の評価:被験者の嚥下時間・呼吸状態と身体所見、および変化時間経過にともなう嚥下機能の変化を検証し、時間経過にともなう嚥下機能の変化をとらえる。また、医療従事者による主観評価も合わせて検討することにより、医療従事者の評価と嚥下音の関係性を確認する。 (4) 嚥下音・呼吸音のデータ分析をふまえ、嚥下機能の重症度の評価基準を検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、主に次の2点において未使用額が生じた。1))国内・国際会議のオンライン化に伴い出張費が予定より減少した。2)病院内における臨床実験開始の遅れに伴い、必要物品の購入量が少なかった。 次年度は、院内コロナ感染対策に十分対応しながら臨床実験を進める予定であり、主な助成金の使用計画は下記の通りである。 1)設備備品費:主にデータ分析に必要となるソフトウェアおよび分析用PC、実験に必要な物品使用に必要となる消耗品を購入予定である。2)旅費:データ分析結果を学術集会にて発表予定である。3)人件費:データ計測の進捗にともない、分析補助者を雇用予定である。
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