2022 Fiscal Year Research-status Report
手足の残存能力を反映した歩行支援器具選択のための新しい評価指標の研究
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20K20269
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
井上 淳 東京電機大学, 工学部, 准教授 (20609284)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 運動解析 / 計測システム開発 / リハビリテーション / 運動錯覚 / 運動介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、手足の残存能力がそれぞれある程度存在する患者を対象とし、片麻痺患者が杖歩行訓練を行うための歩行器の開発を継続している。その中で、大きく分けて下記の3つの研究成果が得られた。 腱への振動刺激を与えることによって生まれる運動錯覚を用いて、歩行運動への介入が可能であることを明らかにした。現在まで、静止状態での運動錯覚を利用して人間の動作へ介入する研究は広く行われていたが、運動時の介入を取り扱う研究は多くない。本研究では、歩行時に足部関節周辺筋の腱への振動刺激を与えることで、歩幅を変えることに成功した。今後、この成果により、片麻痺で左右の歩幅が異なってしまう患者に対してフィードバックを与えることができると考えられる。 また、歩行中の加速度から、0.5歩行周期先までの移動速度を予測することが可能となった。これにより、歩行訓練機を動かす際に、ある時間の予測値が運動の中で大きく変動する場合には事前に異常を検知し、転倒やスリップなどのごく初期の段階、ないしはそれが高確率で起きると判断できる時点で予測し、装置を止めることが可能となった。 これと併せ、新たなセンサを開発し、歩行中の靴内や、杖を把持する手の平などにかかる圧力や剪断力の計測を可能とした。このセンサは0.5㎜径のワイヤからなり、円形形状等にすることによって、センサで計測する振動から機械学習的アプローチを用いて圧力や剪断力を推定する。なお、本センサは特許を出願し、今後の実用化に向けて研究を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
手足の残存能力がそれぞれある程度存在する患者を対象としていた杖歩行訓練機について、その対象患者拡大に向けた研究を進めることができた。 歩行中に振動錯覚を与えることで、歩幅への介入を対象者の無意識下で実施することができ、見守り無しでも安全かつ効果の高い歩行訓練に繋げることができると考えられる。 さらに、安全面で重要であった、異常動作の検出を、運動予測の手法を用いることで、早い段階、もしくは実際にその運動が開始する前の段階で実施することができるようになった。これは歩行動作が繰り返し動作であることから可能な手法ではあるが、歩行訓練の上では重要な研究成果である。これらの研究成果から、本年度の杖歩行訓練機に関する研究はおおむね計画通りに進展している。 その上で、研究開始時には想定していなかった新たなセンサを、偶然のひらめきとその後の膨大な実験により開発できたことから、今後はそのセンサを活かすことで、運動計測の効率を向上させることができると考えられる。 以上の成果から、現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展が見られたものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2023年度で最終年度を迎えるため、手や足の残存能力にあわせて利用できる歩行訓練機について、その対象の拡大を見込めるように、本年度で実機を完成させることを目指す。 具体的には、これまで個別に研究してきた、異常動作の検出、0.5歩行周期先の運動速度の予測、振動を用いた運動錯覚による歩行への介入等を統合し、一つの実機として評価するところまでを目指す。 また、新たに開発したセンサについては、運動計測関連だけに限っても応用範囲が広いことが想定されるため、様々な動作の計測への応用可能性について検討を行う。
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Causes of Carryover |
2022年度は15106円の次年度使用額が生じているが、適正に使用した結果の残額であり、2023年度の研究で使用する予定である。
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